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ユラちゃんは目だけで俺を見る。
「マオ、知らない?」
「わからない。ごめん」
「いちいち謝んなくっていいわよ」
「ミューの、特殊能力は、めずらしいからね」
割り込んだサキくんの声は、先程までとは違い、震えていた。
リオちゃんとリッターくんがサキくんを見、ユラちゃんはふんと鼻を鳴らして足を伸ばす。
「そっちの検証を見たいってこと? よってたかって?」
「癒し手になることで、変化するかもしれないだろう?」
「それはないわ。そんな事象は聴いたことがないもの。読んだこともね」
「でもそれは、普通の癒し手だからじゃないのかな。ミューは癒しの力を、すでにふたつ持ってる。癒し手になればみっつに増える。特別な癒し手になるんだよ。その状態ならなにか変化があるかもしれない」
ユラちゃんはもう一度鼻を鳴らす。サキくんはおそれるような表情をしている。
「だとしても、異常よ」
「異常ときたか」
サキくんがはっと笑ったけれど、無理にだったようで、表情はすぐにくらくなる。
「異常でしょう。わたしは恢復魔法の検証より、そっちがゆるせないわ。ミューのやつ、自分がどう」
ユラちゃんはしゃっくりし、顔をしかめる。リオちゃんがおずおず、云った。
「ねえ、さっきも、ミューくんの特殊能力の話をしていたけれど、それってなんなの?」
ユラちゃんがリオちゃんへ顔を向けた。いぶかしげにしていたが、ああ、と云って頷く。
「そうね。あんた、別行動だったものね。見ていないのよね。あら? サキはどうして知ってるの」
「ミューが……教えてくれた」
サキくんは歯切れが悪い。ユラちゃんは右脚だけ、再び折り曲げて、そこに頬杖をつく。
「喧嘩でもしたの? あいつ、底抜けに優しいから」
「それには全面的に同意するよ。実際、そんなようなことだったしね」
サキくんはわざとらしく笑い声をたてる。「僕は愚かだからな」
「あんたが愚かなら、賢明な人間なんてこの世に存在しないわよ」ユラちゃんはばっさり切って捨て、一瞬口を噤む。「あいつ、かえの衣裳は持ってるのかしら」
ミューくんのもうひとつの特殊能力ってなんなの、と、俺が口に出しかかった時だ。メイリィさんがぱっと、湖とは反対の方向を見た。リッターくんとリオちゃんが振り返り、サキくんは俯き加減だった顔を上げた。ユラちゃんが姿勢を正してそちらへ顔を向け、俺はメイリィさんみたいにする。
濁った白の羽が見える。
羽持ちの大人にはさまれるみたいにして、悄然としたほーじくんが歩いてきた。




