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食事が終わって、それぞれが準備をすますと、俺達は外に出た。メイリィさんも一緒だ。今回、湖の傍まで、メイリィさんはついてきてくれるらしい。
「おはよう」
「ミュー、ようやくあんたの番ね」
神聖公国寮の前には、制服姿のリッターくんとユラちゃんが居て、ユラちゃんはにまにましていた。
「なによ、自分が一番最初になるに違いないって云ってたくせに。予測が外れたんだから、あんた、今日は秋の娘亭のお菓子おごんなさい」
「ああ、わかったよ。まったく、リーニさんのとこは行列ができてるって、知らないのか? ユラ?」
ミューくんもにやにやして答えた。ユラちゃんはミューくんの腕を軽く叩き、掴んで揺さぶる。「おめでと」
「ありがとう」
「リッター、なにもじもじしてるのよ。あんたもお祝い云うんでしょう」
ユラちゃんがミューくんから手をはなし、リッターくんを振り返った。リッターくんは目を軽く伏せていたが、つかつかとこちらへやってきて、ミューくんの手を掴んだ。
そのまま、ミューくんの顔のどこかへ口付けようとしたみたいだが、ユラちゃんがリッターくんのあしを払い、ジーナちゃんがリッターくんの肩をおしたので、リッターくんはせなかから倒れた。しかし、ミューくんの手を握ったままだったので、ミューくんもまきこまれて、リッターくんの上に倒れる。
ミューくんがじたばたして立ち上がった。リッターくんは上体を起こし、驚いたような顔で、右頬に手をぺたっとあてた。「ミュー、ありがとう」
「どうも」
ミューくんが皮肉っぽく返す。どうやら、事故でリッターくんのほっぺにキスしてしまったようだ。リッターくん、運がいいのか悪いのか。
「あ」ミューくんがぴょんととびあがって、走り出した。「サキ!」
やっぱり制服姿の、サキくんとリオちゃんが歩いてきた。サキくんはにこやかに手を振ったが、ミューくんにとびつかれてびくっとする。
ミューくんはサキくんの両頬にちゅっちゅとやる。サキくんは目を白黒させた。「ミュー?」
ミューくんは最後に、サキくんの唇にも、本当に軽く口付けた。親兄弟や、とても親しい友人への親愛の情のあらわしかたとして、こちらの世界ではそれほどおかしなことではないので、キス自体には誰も驚かない。俺は毎回吃驚しちゃうけど。
ミューくんは小さく頷く。
「これで大丈夫」
「なにがだい?」
「色々」
ミューくんはそう云い、サキくんをぎゅっと抱きしめる。立ち上がったリッターくんがしょぼんと肩を丸め、ユラちゃんがそのせなかをばんばん叩いた。




