表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3367/6878

3233


 外は明るい。今日は快晴だ。

「マオさん、おはようございます」

 神聖公国寮の厨房へ這入ると、ミューくんが料理人の治療をしていた。俺は面喰らって、ちょっと身をひく。

 メイリィさんが小首を傾げた。「なにか……?」

「ああ、彼、指を幾らかはさんだんですよ。鍋と鍋で」

 聴いただけでも痛そうだ。思わず顔をしかめ、治療されている料理人の近くまで行く。メイリィさんもだ。

「大丈夫です?」

「うん」料理人は苦笑いでそう答え、それからミューくんを見る。「申し訳ありません、ファバーシウス卿」

「たいしたことじゃあないですよ。はい、おしまい」

 ミューくんは料理人の、血まみれの手を優しく叩いて、にっこりした。


 ミューくんは朝のお祈りのあと、寮のまわりをぐるっとひとまわり散歩して、たまたま厨房の傍を通りかかったそうだ。その時に、なかから小さな悲鳴が聴こえ、とびこむと、料理人が重たいお鍋同士に指をはさまれて、別の料理人達で救出しているところだった。

 お鍋、といっても、アルミやステンレスの比較的軽いものや、衝撃で割れる土鍋ではない。分厚くて平たい鉄鍋だ。平たくて把手が一本、重ねて置くことが簡単なのでそうしているのだが、その山をふたつに分けようと途中に手をさしいれたら思ったよりも重くて指をはさんだ、ということらしい。

 勿論、ミューくんは落ち着いていて、別の料理人達が怪我をした料理人を救い出すと、怪我した手をタオルで拭いてあげながら椅子に座らせた。それから、優しく声をかけつつ治療したそう。

「もう癒し手みたいだね」

 俺が感想にもなっていないような感想をもらすと、広間の椅子に座ったミューくんは苦笑した。ミューくんは今から朝ご飯を食べる。「おかげで、ジーナやリッターみたいに心配する必要もありませんよ。俺は宣言しても進歩がないってことですから」

「そんなことないよ、癒し手になったら癒しの力が増えるんでしょ?」

「そうはいっても、もうふたつありますからね」

 メイリィさんが、厨房からお膳を運んできた。お、神聖公国寮、今朝はチーズいりのコーンポリッジ、粒マスタードを添えたボイル腸詰め、ゆでたまご、きゅうりとキャベツのサラダ、ポレンタっぽい黄色いパンに、いちごジャムいりのヨーグルトだ。うわー、うまそう。

 俺が運ばれてきたお膳に目をかがやかせたからか、ミューくんは隣の椅子をひいた。「マオさんもどうぞ」

「えっ、だめだよ、俺はあの、あとで勝手に食べるから」

「不安なので、一緒に食事をしてほしいな」

 ミューくんはまったく不安に思ってなんかいないだろうに、そんなふうに云って笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
― 新着の感想 ―
[一言] ハッピーエンド信じてます マオさんへ 夕飯のメニュー考える手間が省けてます 有難うございます
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ