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七月十六日。俺がこちらに来てから、667日目。
「マオ、ごめん」
朝、身繕いしてから広間へ行くと、アロさんがとんできた。顔があおくなっている。俺はアロさんの腕をとって、云った。
「どうかしました?」
「ああ、僕どうかしてた、ごめん。昨夜、伝え忘れてたんだ、今日なんだよ、フォージ卿とファバーシウス卿の宣言」
「え」
「ごめん!」
俺は、大丈夫ですとかなんとか云って、厨房へ走った。お弁当、七人分つくらなきゃ!
忙しいのだ。伝達ミスは起こりうる。アロさんの責任じゃない。
俺はといたたまごを平鍋で焼きながら、ちまきをゆがいていた。あと少しゆがいたら、むし器に移す。みんな、お米好きみたいだったし、今日に限って誰もパン種を仕込んでおらず、時間がたってもやわらかいパンは確保できない。収納空間にはあるけれど、どうせならつくったばかりのものをあげたかった。
たまごには角切りのトマトとじゃがいも、チーズがはいっている。くるっとひっくり返し、ちょっとだけ油を足した。
ちまきをお鍋からとりだし、調味液のはいったボウルへひたした。ちょっと置いてから、湯気の上がるむし器へ移す。蓋をして、ここから十分くらいむす。具材はとり肉・人参・きくらげと、収納空間に着服していた栗だ。
焼けたたまごやきをまないたへとり、切った。キーラさんがすぐにさましてくれる。四月の雨亭でつかっていた折り箱があるので、それへいれた。
たまごやきの隣には、きのこのバターソテーをいれた。パセリのみじん切りを沢山つかっていて、さわやかな香りがする。こちらもキーラさんにさましてもらったものだ。
生野菜は、時期が時期だし、腐るかもしれない。なので、生野菜のサラダは辞めて、ゆがいたキャベツのごま和えにした。
ちまきがむしあがったので、火から外す。キーラさんがまたしても、すぐにさましてくれて、ちまきも折り箱に収まった。
とっちらかった献立だが、なにも考えていなかった俺の責任だ。それに、これでもおいしそうだから、いいだろう。
キーラさんが、あらためて、お弁当すべてをさましてくれた。俺はお弁当に蓋をして、麻紐で縛り、収納する。キーラさんに頭を下げた。「ありがとうございます。助かりました」
「ううん。急いだほうが……」
キーラさんが言葉を切った。驚いた顔だ。「ファラワ」
「いい匂いだね」
いつも困り顔のファラワさん、それにアマラ先生が、厨房の出入り口辺りに立っている。




