3230
話し合いのあと、俺だけ残って、アロさんと話した。私兵達への特別手当についてだ。
今日、事務の先生やジアー先生、エルセイユ先生を織り交ぜての話し合いの場がもたれ、私兵達への特別手当は三月からほんの少しアップすると決まったらしい。「今までの上がり幅と比べたら些少だから、それはいいけど、結局はどんどん肥大していくんだよね、経費が」
アロさんは充血した目でそう云う。八月前に、それも山道掃除の前に、突然複数人に辞められ、新人指導という業務が追加されてしまったので、アロさん、エイジャさん、キーラさん辺りは酷い睡眠不足になっている。短時間、瞑瞑で強制的に寝る、という強硬手段に出ているが、人手不足はいかんともしがたい。
「こんな状態じゃ、折角の寄付金を私兵達に投げ飛ばすような格好になってしまうよ。学生さんの為に用意しなくちゃいけないものも、やっておかなくちゃいけないことも、沢山あるのに、来年の三月、またあの野郎がねじ込んでくるかと思うと、もう、……」
「ジアー先生に相談したらどうですか?」
アロさんがどうにも追い詰められているらしいので、そう提案したが、彼は勢いよく頭を振った。
「だめだよ。僕が一任されてるんだから、僕がやらなくちゃ」
「はあ」
「とにかく、来年の交渉の時、マオ、応援頼むね」
アロさんは、俺が来年までに居なくなるなんて、欠片も思っていないようだ。俺はアロさんに対して、来年は居ないですとも云えず、頷くしかなかった。
「じゃあ……僕は、神おろしさま達の食糧の手配があるから」
「なにか手伝いましょうか」
「ううん。フォージ卿もファバーシウス卿も、宣言が近いだろうから、マオは夜遅くまで起きてちゃだめ」
アロさんは気丈に云って、俺の肩を軽く叩き、厨房へ消えていった。普段御山に居ない神おろしと証人が、かなり負担になっているのだが、先生がたはそれをどうにかしようとしないのだろうか。
七月十五日、俺が関わる宣言はなく、なので、これまで宣言で穴を開けた分お仕事を頑張った。具体的には、荷運びと、調理だ。
神おろし達の食べる食糧を、空き間でうけとり、先輩に背負ってもらって上まで運ぶ。それを三回やった。日持ちのするものは神聖公国寮の厨房に運びいれ、そうでない幾らかの食糧は、時間停滞の収納空間持ちかつ魔力の高い先輩達が、分担して持った。
それが終わると、日持ちがして、冷えてもおいしいローストビーフなどを、奉公人の寮で、キーラさんと協力してつくる。調理ができないひと達でも切ったり盛りつけただけで食べられるものを、沢山用意しておくのだ。忙しさは最高潮で、なにが起こるかわからない。料理人が全員ダウンすることだって考えられるからな。
そんなふうにして、七月十五日は終わった。




