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みんなの気持ちは嬉しいが、子どもにあげたお菓子をとりあげるなんて非道なことはできない。だから俺は、お礼を云って、断った。
チョコレートがみんなの口のなかへ消え、食事が終わった。先輩がふたりやってきて、俺に急いで奉公人の寮へ戻るようにと云う。ひとりが食器類を収納してしまい、俺はじゅうたんを収納して、もうひとりの先輩と戻ることになった。
ミューくんはまだ、底抜けに機嫌がいい。リッターくんが接近していても、じゃけんにしない。
「それじゃあマオさん、明日か明後日には、さすがに俺の番もまわってくると思いますから、その日は宜しくお願いします」
「うん。お弁当つくるね」
「みんな、一緒に四月の雨亭へ行きましょうね」
リオちゃんが楽しそうに飛び跳ねた。ジーナちゃんが、微笑んでそれを見ている。距離はだいぶつづまったみたいだ。
ほーじくんが俺の傍に来て、遠慮がちに手を伸ばしてきた。俺はほーじくんの手を掴み、引き寄せて、軽く抱きしめる。ほーじくんは驚いたみたいだった。
「じゃあ、またね、ほーじくん」
「う。うん、マオ、またね……」
離れる。手を振って、先輩と一緒に神聖公国寮をあとにした。
これくらいゆるされるよね?
俺が呼び戻された理由は単純で、山道掃除についての話し合いだ。じゅうたんが二枚織りあがり、今日中にあと一枚、明日には四枚完成するかもしれない。なので、明日になったらくじをつくる。それは、疎蕩者に敬意を表して、髪を伸ばした女性が、一時的に男のように着飾って行う。
くじを作成する大役は、ほぼ満場一致でディロさんが選ばれた。当人は拒否したが、エイジャさんが、ディロさんは手先が器用だからできると太鼓判を押して、もう覆らなかった。
南の娼妓達に供するご飯の献立についても、少し話し合いがあった。俺達が決めたメニューで問題ないそうだ。きびだんごは、みんな食べたがっているので、多めにつくっておいてほしいとお願いされる。
それと、前の時は食事の準備と配膳で手いっぱいで、知らなかったが、南の娼妓達は空き間につくと、御山歴の長い先生がたと、少しの間話をする。これは、南の娼妓達が御山に直談判する場でもあったんだけど、今はそんなふうなやりとりはまれで、御山の先生がたで南の娼妓達を労い、賞賛するそうだ。先生がたが忙しいと、奉公人達で代わりを務めることもある。
そのあと、掃除をはじめて以降、南の娼妓達は神聖なものとして、条件をみたさないと直視も触れることも厳禁になる。二度目だからと安心しているかもしれないが、その点気を付けるようにと、念をおされた。




