3227
他愛もないことを喋った。
リッターくんは、ジーナちゃんにお祝いを云いに来たのじゃなくて、ユラちゃんから様子を見てくるように云われて来たのだそう。ミューくんはそれを聴いても、別にがっかりしたり怒ったりはしない。
サキくんは、ジーナちゃんがそろそろ宣言を終えているだろうと考えて、まさしくお祝いを云いに来たのだ。ジーナちゃんが嬉しそうにしたので、ミューくんがからかった。
「ジーナは、サキにお祝いされるのが嬉しいみたいだな」
「ミュー」
「俺だってサキが来てくれたから嬉しいよ。サキ、俺が宣言したあとも、一番にお祝いを云いに来てくれる?」
ミューくんが可愛らしく小首を傾げ、隣のサキくんにそう迫った。サキくんは微笑んで頷く。サキくんとは反対の場所、めずらしくミューくんの隣に座れたリッターくんは、ミューくんの後ろ髪をじっと見ていた。
「論文、あんた達のおかげでかなり形になってきたの」
ユラちゃんはうすい胸を張る。まだ食事中だが、ユラちゃんもリッターくんもそれを考えていないようだ。
「共同執筆者として、ほんとに名前をのせるから。いいわよね?」
「勿論よ。ねえサキちゃん?」
「ああ。ユラの手伝いができて、光栄だよ」
ユラちゃんは満足そうに頷いて、俺を見る。俺も頷いた。「どうぞ」
「じゃ、できあがったら、控えをとって、あんた達にも読ませてあげる」
「俺には許しを得ようと思わないのか?」
「あんたがわたしに逆らうの?」
リッターくんは口をへの字にした。可愛い。
リオちゃんが飛び跳ねるような動きをした。口の端に照り焼きのたれがついているが、気付いていないらしい。
「ねえ、もうあとは、ミューくんとフォージくんだけでしょ。七月もあと半分だし、ふたりはおんなじ日の宣言になるのじゃないかしら?」
「ああ、そうかもしれないな」
ミューくんが頷く。まだ宣言がすんでいない学生さんは、十人と少しくらい。だから、ほーじくんとミューくんが同じ日の宣言になるのでは、というのは、わからないでもない。
リオちゃんは両手を合わせ、にこにこしている。
「それなら、その日にみんなで一時下山しましょ。マオさんにお弁当をつくってもらって、夜はみんなで四月の雨亭へ行くの」
「リオ、君は食欲があるね?」
サキくんはそうからかったけれど、リオちゃんの提案を否定はしない。みんなもそうだ。「じゃあ、四月の雨亭で、そのままマオさんを待っていられるな」
「ルッケンレーネを見に行くの、楽しみね」
ミューくんとジーナちゃんが追随する。ほーじくんとリッターくん以外はくすっと笑い、ほーじくんとリッターくんは微笑んで頷いた。




