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俺は迷ったものの、訊いた。
「あのー、おめでたいって、なにが?」
「あ」ミューくんが、たった今思い出したみたいに、俺を見た。「すみませんマオさん、俺、はしゃいじゃって」
「本当に……ミューがあんまり騒ぐから、云いづらいわ」
ジーナちゃんは唇をちょっとゆがめて、数回瞬いた。ミューくんは髪を耳にかける。ほんの少し、ばつが悪そうだ。「悪かったよ、ジーナ。嬉しかったからさ」
「そんなに大袈裟なことではないじゃない」
「いや、それには同意できない」
ミューくんは左掌を見せる。「俺は誓って、本気で喜んでるし、君にとってはいいことだと思ってるし、大袈裟に騒ぐくらいのことだとも思ってるよ」
「そうかしら」
「そうだよ。マオさんにも能力証を見てもらうといい」
ジーナちゃんは逡巡を見せたが、頷いて、どこからか能力証をとりだした。それを軽くひろげて、俺に見えるように、さしだしてくれる。
俺はジーナちゃんの能力証を見下ろした。おやっと思う。隠密がなくなっているのだ。
それから気付いた。職業欄に、「神弓」と書いてある。
「職業と特殊能力が統合された場合、当然ですけど特殊能力欄に表示されるんです。でも、能力証にする場合には、職業欄に書くことになってる」
ミューくんはにこにこして、説明してくれる。「でないと、職がないみたいでしょう? それに、統合後に特殊能力の欄に表示されるからって、職業じゃないという訳でもないんですよ。だって、そうなったひと達は、ほかの職業に就くことができないから」
ミューくんはまだ、なにかに酔ったみたいな口調だったけれど、それでも説明は順序立てられているし、明晰でわかりやすい。
要するに、狩猟士と隠密が統合して、神弓になった、ということだ。それで、ミューくんはこんなにはしゃいでいる。
ついでに、ズフダリフ先生に落ち着きがなかった理由もわかった。たしかに、めったに居ない神弓になるかもしれないなら、宣言に立ち会い、そのあとすぐに行われる検証を見届けたいという先生がたの気持ちはわかる。先生がたは、よくも悪くも学究肌で、探究心が凄まじい。
それにしてもそうか、職業と特殊能力の統合か。それも、神弓である。めでたい、の意味は、よくわかった。
これで、御山がジーナちゃんに、狩猟士になるようにとすすめた理由もわかる。おそらく、狩猟士と隠密が統合するのではないかと推測するだけの理由があった、もしくはそういった実例があった。そういうことだろう。




