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片付けをして、先生がたに挨拶し、その場から離れた。ミューくん達も一緒だ。というか、ふたりが一緒だから安全であるという判断で、俺は移動できているのである。俺をひとりにしたら、重大な惨事が起こると、先生がたはそう考えているらしい。
ズフダリフ先生は、次に宣言をする学生さんの、その付き添いの学生さんを護衛する為に、湖の傍に残っている。それは、学生さんの身の安全という問題もあるが、湖に勝手に近寄らないようにという見張りでもある。学生さん達は非常にアグレッシヴで、都合よく決まりを忘れることも、なくはない。
奉公人が指示に逆らうなんてことはめったにないので、俺を見張る意図はなかったと思う。だって、奉公人だもん。命令違反は即、御山から退去させられる可能性がある。指示に逆らうなんて蛮勇を持ち合わせているひとはめずらしい。
俺は以前ひとり行動禁止を破ってしまったが、あれは尋常ではない例なので参考にはならないし、罰もあったからほかの奉公人に示しがつかないなんてこともない。
ミューくんは異常に機嫌がいい。突然きゃっきゃっと笑い声をたてて、なにかと思ったらその辺に生えている草を指さして、なんというか……たがが外れているようなことを云う。
「なあ、あれってユラの髪みたいだな、ふわふわしててさ」
「そうかしら……」
「おい見ろよジーナ、あの草、あれってどこにだって生えてるよな、還元でもたいした量の素にならないし、できるものもなんでもないってサキが云ってたぜ。それにしたってどこでも見かける。リッターみたいに俺のあとをつけまわしてるんじゃないかって思うくらいだよ」
「ミュー」
「それにしても天気がいいなア」
終始、こんな具合なのだ。
ジーナちゃんはちょっと様子のおかしいくらいに機嫌がいいミューくんを、どうにも扱いあぐねているみたいで、困ったみたいにミューくんの腕を何度も叩く。「ミュー、落ち着いて頂戴」
「落ち着いてるよ。めでたいと思ってるしね」
めでたい?
ジーナちゃん、追加の職業加護をもうもらえたのかな。それならめでたいというのはわかるし、ちょっとはしゃぐのも納得だ。
ジーナちゃんは軽く目を伏せて、ミューくんの手の甲をつねった。「いたいよ」
「痛くしているの」
「どうして?」
ミューくんは顔をしかめ、ジーナちゃんは肩をすくめる。
「あなたらしくないから」
「君のことで喜ぶのが俺らしくないのか?」
ミューくんは口を尖らせた。ジーナちゃんはしかし、質問には答えない。




