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ミューくんがもどかしく感じているのは、なんとなく理解できた。
ミューくんは癒し手志望だ。癒し手というのは、めずらしい職業ではない。でも現実、ミューくんの宣言は後にまわされ続け、癒し手よりも遙かにめずらしい職業である公証人や護衛士が、先に宣言をすませている。ジーナちゃんの狩猟士も、癒し手よりはめずらしい。ミューくんがぼやくのも納得だ。
多分、ミューくんの特殊能力に関係あるのかな。でも、ミューくんが持っているもうひとつの特殊能力がなにかを知っているジーナちゃんも、ミューくんの宣言がこんなに遅れるのは意外みたいだったから、それが原因とも云いきれない。まあ、いずれにせよ、ミューくんの宣言は遅れている。
俺はミューくんと頷きあって、厨房のなかへとすすんだ。奉公人達が、ジーナちゃんの傍へ寄らないようにしながら、食事をつくっている。学生さんは相当、数を減らしたので、お料理をつくる量も少ないし、作業している料理人も少ない。別の業務にかりだされているのだ。証人や神おろし関連で、手は幾らあっても足りないし、山道掃除が終われば九月に向けての準備が大量に待っている。
学生さん達の荷物の申請の受理、能力証含む書類の受理、学生さん達が利用している商会の精査、諸々があるのだ。休みはとれる筈だけど……。
ああ、それまでに、俺は居なくなるのか。
「ジーナ、朝ご飯を食べよう」
ミューくんがジーナちゃんの傍らにしゃがみこみ、優しく云った。ジーナちゃんは項垂れたまま、小さく云う。
「なんだか、あまりおなかがすいていないみたいなの」
「そんなことないよ。食べればおなかがすいてることに気付くさ。さ、掴まって」
ミューくんが手をさしだすと、ジーナちゃんはちょっとためらっていたが、自分の手を重ねた。ミューくんがにっこりして立ち上がり、ジーナちゃんを広間へとエスコートする。俺は少し離れて、それを追った。
ジーナちゃんは広間の椅子に座っても、項垂れたままだ。ミューくんがジーナちゃんのせなかを撫でて、燕息をかけ、優しく喋りかける。
「ジーナ、大丈夫だよ」
「ええ……」
俺はふたりに、あたたかいミルクティを淹れた。ミューくんはジーナちゃんの前に置かれたマグを示す。「ジーナ」
「ええ」
ジーナちゃんは返事をするが、マグを手にとろうとはしない。かわりに、とても小さな声で云う。「わたし、本当に狩猟士になって、大丈夫かしら。弓は一番得意という訳ではないし、なんだか……こわいわ」




