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ああ、と、その時に不意に、こちらの世界の司法に関して、腑に落ちた。色々とお調べがずさんだったり、ある程度で諦めてしまったりして、俺にとってはもどかしく腹だたしいことが多々ある。でも、そうじゃないんだろう。
この世界のひと達にとっては、神さまがあまりにも近い。天罰が下ることが実際にある。だから、悪いことをしたひとにもそういったことが起こると思っているのじゃないかな。はっきりそう考えている訳でなくても、心の底にそういうものがあると思う。
その差だ。俺はどこまで行っても部外者だな。
ミアリくん達は、空き間のお掃除に対して不安を抱いているみたいで、俺は少し話した。西の一の門に触らなければ、なにもこわいことはない。そういう話だ。
キーラさんが出てきて、俺達に朝ご飯を運んでくれた。牛骨ベースのキャベツのスープにたまごをひとつ落としたものは、たまごが半生だったので俺だけ更に過熱してもらった。これくらいならサルモネラは心配ないと思うんだけど、単純に俺は生煮えのたまごが得意じゃない。
腸詰めをまきこんだパンは、俺がキーラさんにつくりかたを伝授したものだ。うまい。ハーブがきいてる腸詰めだから、さっぱり戴ける。
冬瓜とパプリカのあたたかいサラダは、生姜たっぷりのドレッシングがぴったりで、おいしい。
デザートはすいかのシャーベットだった。もう夏だもんな。最後にはちみつをかけてあって、いい香りだし、甘くておいしい。
俺達は同じテーブルでご飯を食べた。ミアリくんはまた、魂がぬけたみたいになっている。この子は元気な時と静かな時との差が凄く激しい。具合が悪いという訳ではないと思うけれど、なんだか不思議な子だ。
食後、歯を磨き、俺は隠し通路を通って神聖公国寮へ向かった。
ジーナちゃんは神聖公国寮の厨房に居て、でもお料理をしてはいなかった。調理台の傍で椅子に腰掛け、膝の上で両手を握りしめて、軽くうなだれている。制服姿で、スカートがふわりとひろがり、絵画のようだ。
今日は彼女の頭にヴェールはなく、顎の少し下くらいまで伸びた髪が、その顔の表情を覆い隠していた。
「マオさん」
廊下側の出入り口近くに立っているミューくんが、低声で云った。「おはようございます」
「おはよう……ジーナちゃん、大丈夫?」
「ちょっと、緊張しているみたいです」ミューくんは苦笑いだったが、すぐに表情から笑いは消え、苦そうなものになる。「俺も今日宣言だったらよかったんですけど……まさか、こんなに待たされるなんて」
俺はなんともいいがたく、唸るような声を出すだけだった。




