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三人と手を振り合って別れ、俺とリッターくんはゆっくり、帝国領へ向かって歩く。二年生達が居なくなってしまったし、一年生も宣言後に半分くらいは一時下山しているので、御山は静かだ。一番走り込みをしていたギルワさまと、やっぱり鍛錬に余念のないキオ卿が居ないので、尚更静かに感じる。あのふたりが居たら、すっごくにぎやかな感じ、するもん。
帝国寮が見えてきて、サフェくんとアロさんが、新人さん達に指導しているのが目にはいった。お庭のお掃除と、寮舎の外壁の洗浄をしているようだ。
サフェくんがこちらに気付いた。「マオ。リッターさま」
俺はサフェくんに軽く手を振る。リッターくんも似たような動きをしたが、少々ぎこちない。職業加護検証で、相当疲れたんだろう。
サフェくんがアロさんになにか云い、こちらへ走ってきた。やってくると方向をかえて、俺達と並んで歩く。
「リッターさま、宣言、いかがでしたか」
「ああ」リッターくんは深く頷く。「大丈夫だった」
端的で、リッターくんらしい。サフェくんがくすくすして、俺もそれにつられた。リッターくんに気分を害した様子はなく、それどころか、俺達を見て微笑んだ。リッターくんと考えれば最大級の笑みだ。え、可愛い。
サフェくんが頬を紅潮させ、嬉しそうに飛び跳ねる。サフェくんは、リッターくんも弟みたいに可愛がっているのである。
リッターくん、随分緊張していたし、相当気を張っていたんだろう。それから解放されて、思わず笑みがこぼれた、という感じだ。
宣言だけは自分でなんとかするしかないし、助けようにも助けられない。傍に居てあげることくらいできて、よかったな。
あとは、ジーナちゃん、ミューくん、それにほーじくんだ。俺は、ほーじくんの宣言に付き添えるのだろうか。
付き添うのがいいことなのか悪いことなのか、わからない。
リッターくんはお握りを沢山食べた。おかか、昆布のつくだ煮、かつおでんぶ、鯖の塩焼き、生姜のつくだ煮、紅生姜、大根の梅酢漬け、肉味噌、豚の生姜焼き、いりたまごなど、いろんな具をいれて、少し小さめに握ってあるものだ。
がらんとした広間で、リッターくんと同じテーブルにつき、俺は頬杖をついて彼を見ていた。どうしてだか、リッターくんとは、本当に兄弟みたいな気がしている。
なんでもない話をして、おいしいものを一緒に食べて、些細な心配や不安を共有して、喋らなくても一緒に居て負担じゃない。凄く不思議だけど、凄く心地いい関係だ。波長が合うってやつ?
リッターくんと別れたあとも、俺はその日一日、穏やかで安心した気分でいられた。




