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じりじりと落ち着かない時間がすぎていく。俺はお茶を淹れて、ふたりに渡した。ありえないが、自分の分のマグを出し忘れるという失態を犯し、リッターくんのことを、自覚しているよりもより心配なんだと気付く。
お風呂ときがえに居なくなっていたシャム先生が、のんびり戻ってきた。ちょっと四辺を見て、俺達がじゅうたんの上に居るのに目をとめ、にこにこ顔でこちらへやってくる。「マオ、わたしにもなにかわけてくれないか?」
「はい、先生」
こういう時、ひととの会話は気が紛れる。それに、奉公人が先生の頼みを断れない。
シャム先生はじゅうたんの上の、あいた場所に座った。ユラちゃんジーナちゃんからは離れた位置だ。俺はマグをとりだして、ストレートティを注ぎ、軽く膝立ちになってシャム先生へ渡した。シャム先生は血を綺麗に洗い落とし、清潔な服を着て、さっぱりした様子だ。
「ありがとう。ファバーシウス卿は……?」
「湖へ」
「ああ、そうか」
シャム先生はくすっとしてから、お茶をすすり、少しだけ困ったような目をした。「成程ね。まあ、戦いに向いた職業になったんだ。宣言直後の怪我はよくある」
「シャム先生も、そうだったんですか?」
ちょっと驚いて、思わず尋ねる。シャム先生は微笑みで頷いた。俺は腰を下ろす。「でも、先生は剣戟士でらっしゃるのに」
「どれだけ、武器をつかえるか、試すことになった。それで、エルセイユ先生にこてんぱんにやられてしまったんだ」シャム先生はこともなげに云う。「だが、こちらもひと太刀くらいは浴びせた。宣言前ならばありえないこと。きちんと職業加護が作用していると先生がたは判断した」
「ああ……」
職業加護は、割合で作用するものと、効果が一定のものとがある。
例えば、格闘姫や舞姫なんかの格闘系職業は、割合だ。与ダメージ+○○%、みたいなやつ。俺の魔王もそうで、魔物に対する与ダメージが割合で増加する。
ゲームっぽく表現すると、本来なら10ダメージのところ、格闘姫が素手で攻撃すれば、相手には40ダメージはいる。ただ、そもそもの与ダメージが1なら、割合で増えるので素手で攻撃しても4しかダメージがはいらない。
戦士とか魔導士の、「○○強化」も、多分もとの能力値ありきで、それの何割分を加算、なんじゃないかな。みんなの口ぶりだと、そんな感じ。サキくんも、もともとの体力が高めだから、戦士でもやっていけそうだ、みたいに云っていた。それって割合で体力が強化されるからこその言葉だと思う。




