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 俺は不安で、クッキーを10枚も食べられない。もごもごとグミを咀嚼し、不安をごまかそうと考えたが、あまりうまくいかなかった。グミはおいしいが、リッターくんが脳裏をちらつく。

 ジーナちゃんもあまりお菓子に手をつけず、クッキーをかじっては膝の上に手を置き、かじっては……と繰り返していた。お菓子をめいっぱい堪能しているのはユラちゃんだけだ。

「あんた達、食べないの?」

「食べるけど、……でも……」

「食べないんなら、わたしが全部もらうわよ」

 ユラちゃんはおそらく、あえて素っ気なく云っている。それはわかる。ここは御山(おんやま)で、御山(おんやま)は学生さんをないがしろにしたりしない。だから、多分、証人や神おろし以外に、万一に備えて癒し手の先生も立ち会っている筈だ。


 癒し手というのは、応急措置に関してはほかの誰もかなわない力を発揮する。もとの世界の救急医療なんてかすんでしまうくらいに、止血の速度ははやい。大概の癒し手は、即死でなければどんな怪我でも対処する。少なくとも、危険な出血をくいとめることはできる。場合によっては、癒し手でなくても、怪我の治療に向いた魔法をつかえるひとであればできることだ。

 そして、リッターくんは不倒だから、なにがあっても一撃では死なない。

 それはわかってる。わかってるんだけど、不安なのはどうしようもない。リッターくんは、無理じゃないような顔で、簡単に無茶をする。一体どこから来る使命感なのか、不倒の検証に真面目に付き合っているのだと思う。それで事故をしないとは、限らない。


 ジーナちゃんはクッキーをかじるのも辞めて、両手で持って、目を伏せ、じっとしている。ジーナちゃんは、リッターくんが不倒持ちだということを知らないが、護衛士の職業加護が「体力魔力徐々に恢復(かいふく)」だとは知っている。職業加護の検証かもと考えていれば、俺よりも余計に心配だろう。

 ユラちゃんはあぐらをかいて、マシュマロがみょんと伸びるクッキーを食べていた。

「ふたりともしんきくさい顔してるわね。やめてよ」

「あなたは心配じゃないの、ユラ?」

「そうでも」

 ユラちゃんは軽く肩をすくめ、何個目かのマシュマロクッキーを手にとった。熱の魔法であたためている。マシュマロがぶくぶくふくらみ、湯気がたつ。

「なにがあったのかは知らないけど、御山(おんやま)なんだから、おそろしいことは起こらないわ」

 トゥスミア先生のことを思い出したのか、ユラちゃんは表情を曇らせて付け加えた。「少なくとも学生には」


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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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