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あ、そうだ。
夜にでも、四月の雨亭にお手紙を出しておこう。チェスくんがレントに居る間、お菓子を配達してほしいって。
四月の雨亭は配達に対応してる。お昼になると配達の為に雇っているひと達が、レント中を走りまわって、お弁当を配達しているのだ。勿論、お菓子だけを配達することもある。なかには塾や習いごとの教室なんかで、子ども達に出すおやつを大量に買ってくれるところもあって、だから第二の厨房は、今は大忙しらしい。
チェスくんに毎日お菓子を、というのは、不可能な話じゃないだろう。俺が居なくなってからもそれが続くように、貝貨を沢山渡しておけばいい。チェスくんが大人になるまでくらいなら、できると思う。
周囲の情況をかえることが難しいのなら、せめて食事に逃げるくらいできないと、爆発してしまう。それに少なくとも、魔法の練習をみっちりやっているのなら、お菓子は完全な害にはならない。甘いものは魔力を補うから。
「マオさん?」
はっとした。ミューくんと目を合わせる。彼は、ちょっと訝しそうに小首を傾げた。「ないですかね、おからのやつ」
「え? あ、ううん、あるよ。はい」
おからクッキーがないか、訊かれていたみたいだ。俺は微笑みをつくって、収納空間からおからクッキーの紙包みをとりだす。
ミューくんに渡すと、嬉しそうににこっとしてくれた。俺はそれにつられて笑い、別の紙包みをとりだす。「こういうのもあるけど」
「なんですか?」
「きなこのクッキー。きびだんごにまぶしてあるやつ」
何度か、みんなにもきびだんごをあげたことがある。ミューくんはそれを、ちゃんと名前も覚えていたみたいで、こっくり頷いた。
「ああ、香ばしくって、甘いやつですね」
「うん。おからと、原料は一緒だよ」
「あ、そうなんだ。味、あんまり似てないけど」
「そうだよね」
ちょっとだけ声をたてて笑いあった。
ミューくんはきなこクッキーの包みもうけとって、早速開く。ユラちゃんがマシュマロクッキーを、器用に魔法であぶっていた。マシュマロがぶくぶくなってておいしそー。ユラちゃんも頑張ればお料理上手になると思うな。お料理の原動力って、食欲だと思うの。
ヒカリ先生が唐突に、湖へ向かって走り出した。癒し手の先生がそれに続きながら、こちらを見て云う。「ファバーシウス卿、来なさい」
「はい!」
ミューくんが即座に応じ、クッキーの包みをじゅうたんへ放り投げるように置いて、癒し手の先生達を追いかけた。これって……リッターくんになにかあったってこと?




