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しかし、シャム先生に、意に介した様子はない。ははっと笑っている。
「もう少し、魔法を避ける練習をしよう。そうしておけば、怪我はたいしたものじゃなくなる筈だ。となれば、ヒカリ先生が居るから安心だろう? しかし、レフオーブル嬢の凄い魔法を目にすることができたし、ヒカリ先生の膝枕まで堪能できて、運がよかった」
ヒカリ先生はシャム先生のセクハラに報復した。シャム先生の頭を思いっきりひっ叩いたのだ。シャム先生がうっと呻き、ミューくんがよしよししてあげている。
リッターくんはなかなか戻らない。
俺達は待ちぼうけをくわされて、仕方ないのでおやつを食べた。ユラちゃんは魔導士になったので、能力の検証で魔法をつかい、疲れてもいる。甘いものは魔力には好影響だから、丁度いい。
じゅうたんを敷いて、お菓子のはいった木製のボウルを複数置いた。ユラちゃんが一番にじゅうたんにぴょんと座り、早速お菓子を物色する。ミューくんが微笑んで、ジーナちゃんの腕をとり、こちらへやってきた。「俺達もいいですか?」
「勿論。ジーナちゃん、クッキー、いろんなのがあるよ」
「おいしそうね」
ふたりもじゅうたんに座り、俺も端っこに腰を下ろした。ユラちゃんが小さな手で、マシュマロをはさんだクッキーをとり、もう片方の手に握りしめる。
それを見て、チェスくんのことを思い出した。あの後、ミューくんと少ない人数でしっかり話せる場面がなくて、チェスくんと顔を合わせたということしか話せていない。チェスくんのあの様子は心配だ。一時下山したミューくんがまた、ファバーシウス家内部のことで消耗しそうな気がする。
ラスターラ卿やファルさまが、心を砕いてくれているみたいだけど……今現在の位でラスターラ家のほうが上といえ、ファバーシウスはとんでもない名家なのである。なにしろ、神聖公を輩出している。
だから、ラスターラ卿達がどこまで、ファバーシウス家のことに介入できるのか、わからない。去年は、チェスくんにいい教師をって、ミューくんの親御さんに推薦したそうだけど、そのひとは今年にはいって辞めてしまったって云ってたし、なんだかままならないみたいだ。
チェスくん、あんなに小さいのに、難しい顔をして、元気がなかった。よくないと思う。俺がなにをできるかって云われたら、多分お菓子をさしいれするとか、それくらいしかできない。
ミューくんに負担がないほうが、嬉しい。ミューくんはほーじくんの一番の友達だから、俺が居なくなった後にほーじくんを支えてほしい。わがままだけどさ。




