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リッターくんが俺の手を握っている。
俺、リッターくん、ユラちゃんは、湖へ向かっていた。じゅうたんも食器類も全部片付けたし、ふたりに歯も磨かせたし、なにも心配はない。俺も歯を磨いたしね。
サキくんとリオちゃんは、図書館で待っている、と云っていた。宣言がすぐに終わるのは、すでに職業に就いたふたりは知っている。宣言を終えたら、すぐに図書館で調べものをすると、ユラちゃんも云っていたし、本当にそうするつもりなんだろう。ふたりとも、律儀だ。
ユラちゃんの志望は魔導士だから、ただでさえ強い魔力が更に強くなる。でも、ユラちゃんならそれをコントロールすることはたやすいと、サキくんリオちゃんはそう信じているのだ。というか、それを考える必要性すら感じていないように見えた。ユラちゃん本人も、そういったことは口にしなかったし、自信があるっぽい。
リッターくんは護衛士になるから、職業加護では能力そのものに補正はかからない。だから、なにかが急激に増えたり減ったりして気分が悪くなったり、ものを持つ加減が下手になったり、そういうことはない。
職業加護で、体力も魔力も徐々に恢復するようになる訳だけど、それって、怪我してもすぐに治ったりするってことかなあ。気になるけど、気になるから怪我してみせて、とは云えない。帰り道で、ふたりに聴こう。
「あ」
ぼーっとしていた俺は、ユラちゃんの声で我に返った。「なにしてんのよ、ジーナ、ミュー」
噴水を越えて、少し歩いたくらいのところだった。
ユラちゃんがふたりへ駈け寄る。俺とリッターくんも、小走りになった。
ふたりの傍で立ち停まる。ジーナちゃんは少し戸惑ったような表情だったが、微笑みをうかべようとしたらしい。だが、うまくいかない。ジーナちゃんと腕を組んだミューくんは、かなり怒っているらしかった。
「あら……ああ、あなた達は今日、宣言だったわね」
「そうよ」ユラちゃんは簡単に云い、小首をかしげた。「ミュー? なによ、その顔」
「ああ、別に君らに怒ってるのじゃないよ。内輪のことさ」
ミューくんはふんと鼻を鳴らす。ジーナちゃんの瞳が、不安そうに歪んだ。彼女は、ミューくんの腕を軽く叩く。
「ミュー」
「君には毎回、ぎょっとさせられるな。俺だったらこんなところでのんきにしていられない」
ミューくんは吐き捨てて、それから顔を背ける。「悪い、君の所為じゃないのに」
「いいわ。あなたはわたしの為に、怒ってくれているのよね。ありがとう」
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