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リオちゃんは本当に、ユラちゃんの友達だから、手伝うのは当然だと思っているのだろう。彼女は少々、ひとの話を聴かなかったり、思い込みが激しかったりはするが、悪い子じゃない。友達や自分によくしてくれたひとに対して、悪い感情を持つような子じゃないのだ。
というか、悪いことをしようとか、ずるいことを企むとか、そういうことさえ考えないというか、そういうことがこの世のなかに存在すると思ってさえいないんじゃないのかな。悪いことを想像することもできない子だと思う。
だから、ユラちゃんがひとりで資料をさがすのは大変だし、手伝ってあげよう、は、リオちゃんにとってはまったく変なことでも負担なことでもないのだろう。たとい自分に利益がなくても。それとも、リオちゃんにとっては、友達が喜んでくれるのが大きな利益なのかな。
サキくんの発言も、全部が全部嘘じゃないと思う。家族に、その……虐待めいた言動をされることはあるみたいだし、だから嫌いみたいに云ってた。家族と頻繁に顔を合わせたくないというのは、そうなんだろう。
でも、ユラちゃんに気を遣わせないようにって、それをいいわけにしている部分もあると思う。サキくんだって、友達の為になにかしたり、友達を手伝ったりできる子だから。
ユラちゃんがいらいらした調子でマグの中身をかきまぜている。
「あんた達って、腹がたつ時があるわ」
「あら? なにか悪いことしたかしら?」
「そうじゃなくって……ああもう、いいわ」
ユラちゃんは手をとめ、お茶を飲む。「じゃあ、今日も宣言が終わったら、あんた達こきつかうからね。多分、あと三日くらいで一段落つくと思うから、それまで、手伝ってよ」
リオちゃんがにっこり笑顔でうなずき、サキくんもにこっとした。
リッターくんが、ユラちゃんリオちゃん越しに俺を見る。「マオ、クッキーを食べたい」
リッターくんの要望でクッキーを配り、お茶と一緒に楽しむ。そうしながら、お喋りをした。
シアイル寮ではこういう遊びがはやっているらしいとか(「ばからしいったらないわ、あいつら御山になにしに来てるのかしら」)、ロア寮ではお酒を呑みながらカードゲームをする子達が居て楽しそうだとか(それ完全に不良だと思うんだけど、楽しそうでいいの? こっちの感覚とのずれを感じる)、なんという商会にはいい武器があるからそこにいつも注文しているとか、そういう話題だ。リッターくんはほとんど喋らず、サキくんを見もしない。サキくんも、リッターくんを見ない。
そこへ、サフェくんがやってきた。宣言順がまわってきたのだ。




