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「それとも、サキちゃんはリッターくんだけの応援かしら」
「リオ、僕は君がどうしても一緒に来いというから来たんだよ」
サキくんの声は少しだけかたく、やっぱり少しだけ早口だった。俺と目が合うが、彼はすぐに視線をずらす。リオちゃんに掴まれていない手が、ゆっくりと拳をつくっていった。
サキくんとリッターくんの目が合うことはない。リッターくんがマグを傾け、お茶をごくごくと飲む。どうやら、どちらも同じくらい、気まずいと思っているらしい。
サキくんとリオちゃんも加わって、俺はふたりにもお茶を淹れた。香りのいいお茶に、大きな氷をふたつ、うかせてある。好みではちみつやお砂糖をいれられるよう、甘味料の容器をじゅうたんの上へ並べる。
サキくんは俺の隣、じゅうたんの端へ座った。片膝を立て、物憂げにお茶を飲む様は、まるで絵のように美しい。この子はちょっと、綺麗すぎるなあ、と、そう感じることが多々ある。どうしてこんなに綺麗なのに、色々と文句をつけられなくちゃいけないんだろう。美人は存在してるだけで世の為になると思うのだけれど。
リオちゃんは、ユラちゃんとリッターくんの間へはいり、ユラちゃんにくっつくようにしている。横座りで、マグにお砂糖をふた掬いいれていた。あぐらをかいたユラちゃんは、マグにはちみつをたっぷり注ぎ、お匙でかきまぜ、くいっと飲んだ。
リッターくんは、氷を噛んでいる。そうしている間は喋らなくてすむとでもいうように。
ユラちゃんが俺にマグをつきだした。「マオ、おかわり頂戴」
「はい、どうぞ」
マグにお茶を注ぎ、氷をひとつ追加する。ユラちゃんはお匙でそれをかきまぜる。どうやら、はちみつをいれすぎたらしい。
「ねえリオ、サキ、あんた達もう一時下山したら? わたしの手伝いなら気にしないでいいから」
ユラちゃんはマグの中身を見詰めてそう云った。それを云うのに、だいぶ勇気が必要だったのだろう。それではちみつの量を誤ったとみた。
リオちゃんはきょとんとし、サキくんは苦笑いになった。それから、リオちゃんが云う。
「なに云ってるの、ユラちゃん。お友達だし、約束したのよ。お手伝いは当然だわ」
「ユラ、悪いけど僕は、君の為に残ってるんじゃないんだ。一時下山したら、煩い家族と顔を合わせる必要が出てくる。それから逃げてるだけだよ」
サキくんはそう云って、ふふっと笑った。ユラちゃんは口を尖らせている。ふたりに負担をかけているみたいで申し訳ない、という表情だった。




