3190
リッターくんが何故か張り合いはじめた。
「マオ、それなら我が家にも来てほしい」
「あんたのとこははちみつしかないでしょ」ユラちゃんがくさす。「お菓子はおいしいけど、マオのつくるお菓子に勝るとは思わないわ」
リッターくんはそれをまるで無視して、俺に云った。
「お前に会いたがっている者達が居る」
「え? 誰?」
「俺の義理の兄達だ」
義理の兄。
……あ。
けもみみさん達のことか。
リッターくんが「義理の兄達」と表現したのは、俺にはちょっとした衝撃だった。
いや、たしかに彼らはロヴィオダーリ家がひきとって、正式に養子にしたそうだから、年齢が下のリッターくんが義理の兄と表現するのはなにも間違っていない。そうなんだけど、なんていうか、ああ……なんだろう。なんだろうな。リッターくんってどうしてこういい子なんだろう。
別に、俺に義理立てしなくてもいいし、リッターくんがジーナちゃんと約束したのはけもみみさん達を傷付けずに家族をさがして帰らせる、それができないならひきとる、だ。だから、かりに約束どおりひきとったひと達でも、わざわざ義理の兄と云わなくてもいい。それに、みんなリッターくんのお父さんの養子になったのじゃなくて、ロヴィオダーリ家の別のひとの養子になったって云うひとも居るから、そのひとは実際のとこ義理の兄でもない訳で。
でもリッターくんにとっては、本当に、義理の兄なんだろう。それをなんの疑問も持たずに云っているらしいのが、いい子だ。
俺の、嬉しいとか可愛いとかいい子だなあとか、そういう感情がいりみだれての動揺を気にせずに、リッターくんは淡々と云う。
「ゾラ達にはこの間、会ったのだろう」
「あ、そうだね、あったよ」
「なら、是非、我が家にも来てくれ。メティへはその後に行けばいい」
「リッター! あんた、礼儀ってものを」
「真珠もかつおぶしも逃げない」
「それはあんたの家だってそうでしょうに!」
ふたりはちょっと目をあわせる。リッターくんはただ、ユラちゃんの目を見ているだけだが、ユラちゃんは思いっきりリッターくんを睨んでいる。
ふたり揃ってこちらを向いた。「マオ、あんたどっちに先に行くの」
「えっ」
「マオの意見を尊重しよう」
俺は目をぱちぱちさせ、首を傾げた。これってどっちを選んでも角が立つやつじゃない? えーと、えーと。
「あ」ぱちんと手を叩く。にっこり笑った。「じゃあ、リッターくんのおにいさん達と一緒に、メティへ行きたいなっ」
ユラちゃんが口を半開きにし、リッターくんは数回瞬いた。




