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「こんなのまともな仕事じゃないよ。ぼく絶対、先生に抗議する」
「いいけど片付けてからな」
「せめて特別手当は増やしてもらわないとな」
「増設に時間がかかった所為でこんなに資料がたまってたんだし、倍額はもらえるでしょ」
資料を書棚へ仕舞いこむメンバーは増えていた。タイティーダさんと、アロさんだ。「くらいから誰か灯頂戴」
「はいよ」
はしごの上のほうで本を並べるアロさんの傍に、トロームさんが投げた灯が漂う。本は魔王に関するものだが、恋愛小説だそう。でも、いろんな資料から抽出した魔王のことを、キャラクターのひとりとして書いていて、寧ろわかりやすいらしい。なので、危ない本としてここに置いておくと決まった。
そういう危ないものも、御山は安易に破棄しないようだ。誰が書いたか、どういう経緯で書かれたか、そういうのが重要らしい。
どうしてかは知らない。でも、同じようなことがあればまた、魔王の本が出版されるかもしれないと云うことで、だから再発を防ぐ為に残しているのじゃないかと思う。魔王や悪しき魂に関する本なんて、重大な事故や事件みたいな存在なのである。
ユラちゃんがここに居たら、大喜びで本をあさるだろう。ここに住みつく可能性もあるな。
俺はぼーっと、ファラワさんを見る。少し顔色がよくなった。でもまだ、やつれてる。元気になってほしい。
エイジャさんがテーブルの上の羊皮紙をぱっぱっと幾つかの束にしている。関連したものでまとめているのだろう。
「マオ、気分は悪くない?」
「大丈夫です」
ドゥロブさんが本を数冊まとめて抱え、テーブルがひとつあいたので、俺はそれへ近寄る。資料はまだまだある。また、最初と同じくらいの山をつくると、レクトラさんがきいーっと叫んだ。
「疲れた。マオは?」
「はあ……」
「マオを送ったら、またあの場所に戻らないといけないなんて、ああ……」
キーラさんは溜め息を吐いてから、欠伸をする。欠伸がうつった。
「はらごしらえしていこう」
「それがいいと思います」
「あそこは飲食禁止なんだ。ひとつ隣の部屋ならいいんだけど、遠いんだよ」
キーラさんはもう一度欠伸をする。それもうつった。
例のお部屋に辿りつく。書棚が幾つかからっぽで、淋しいような気がした。ここにあたらしい資料が置かれるまで、俺は御山に居るのかな。
厨房へ移動する。先輩が三人、スープストックをつくっていたが、俺とキーラさんが奥から出てきても軽く会釈するだけだ。
なにか食べてから戻るというキーラさんを置いて、俺はお部屋へ向かった。とにかく、眠りたい。




