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運ぶのは俺で、収納空間の容量は半端じゃなく大きいから、ここのものすべてを運べと云われても、簡単にできる。
ただ問題は、時間だ。だって、収納するのには時間がかかるから。
というわけで、俺は収納空間の口を、とにかく長く開いた。そこへ通せばはいるから、究極を云えば収納空間の口めがけてぶん投げてもいいのである。
ラウトさんと先輩が、背の高い棚からとってきた資料を運び、収納空間へ落としていく。投げてもいいと云ったが、ふたりはそれをしない。ついでに、俺も運ぶと云ったのだが、収納空間の口をこんなに大きく開いて動きまわったら魔力の枯渇を起こすかもしれないと、ふたりが口を揃えて反対した。なので、大人しく椅子に腰掛け、魔力薬をちびちびやっている。
機密資料、というのかな。なにか、おおやけにできなかったり、とても貴重だったりして、多くの人間の目に触れるところに置いていてはいけないものなのだろう。人海戦術なら時間が短くすみそうなのに、ラウトさんと先輩のふたりだけでひたすら駈けずりまわっている。
「マオ、すぐにすむから」
「はい」
「ごめんね」
ラウトさんはそう謝って、お部屋の端へと駈けていく。先輩も謝りながら収納していく。うーん、居たたまれない。
薬壜がからになり、俺はそれを足許へ置いた。今、ラウトさんははしごに登って棚の上のほうの資料をとり、下で待ち構える図書館員にそれを渡している。図書館員は走って、渡されたものを収納空間へ放りいれる。ばけつリレーみたいだ。いつ終わるだろう。
うとうとしてしまっていた。肩を揺すぶられて、目を覚ます。「マオ、大丈夫?」
「はい」
ぱっと立ち上がった。
見ると、あれだけあった資料がひとつもない。目に見える棚はどれもからっぽになっている。それで、ここの棚は背板がないタイプだと気付いた。
俺は収納空間の口を閉じ、ふたりのすすめでもう一本魔力薬を服んで、ラウトさんと一緒に隠し通路へ戻った。そのまま、三十分くらい歩いて、資料庫へ至る。
「お帰り」
棚がからだった区画へ戻ると、棚がだいぶ埋まっているのが見えた。俺が運んだのではないものもあるから、ほかにも荷運びをしている奉公人が居るのだ。俺とは行き違いになったんだろうな。
預かっている資料をテーブルに出す。ある程度で口を閉じると、レクトラさんがほっと息を吐いた。「よかった、これくらいなら今夜中に終わるね」
俺が隣のテーブルに同じくらいの山を築くと彼女は口をぽかんとさせ、更にその隣のテーブルにも同じだけの山を築くと、今度は口を噤んだ。
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