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書棚の波が終わり、また、少しだけひらけたところに出た。そこにもさっきと同じようにテーブルがあって、でもどのテーブルも無人だ。
そのテーブルの向こうに見える書棚は、はしごはかかっているものの、すべてからっぽだった。なんにもはいっていない。ただ、引き出しみたいになっている部分があるのは、さっきまでの書棚とは違うな。
奉公人達が待ち構えていた。特別チームのメンバーだ。キーラさん、レクトラさん、トロームさん、トルさん、それにしばらくぶりに顔を合わせたファラワさんが、並んで立っている。その全員が智慧者だと云うことは考えにくいから、要するに、特別チームが本を運ぶ係を仰せつかった、ということなのだろう。
「よう」
「エイジャ、遅かったな」
「お前あの部屋にどれだけ資料があったか、覚えてないのか? 智慧者じゃない人間には、記憶力ってものがないらしいな」
エイジャさんとトロームさんが軽口を叩き合い、トルさんがテーブルを示す。「お喋りは後。マオ、ここに出して」
「マオ、魔力薬」
「ありがとうございます」
キーラさんから薬壜をうけとり、軽く頭を下げる。それから、トルさんが示したテーブルの上に、収納空間の口を開いた。「あの、順番とか、重ねたらだめとか、こういうものから出してほしいとか、ありますか」
「手分けするから特にない」
「傷んでも俺が覚えてるから再現できるし」
「重ねて出しちゃっていいよ」
口々に答えてくれた。俺はなんとなく苦笑いして、テーブルに資料を出す。先輩達がそれに群がり、書棚は徐々に埋まっていく。
魔力薬を口に含む。俺は、あの後来たラウトさんにつれられて、行きとは別の隠し通路を歩いていた。今度は、図書館へ行くらしい。
「ごめんね、マオばかり働かせて」
「いえ」
「どこも、資料は八月までに片付けてしまいたいんだ。智慧者に丸投げすればいいと思ってるんだよねえ」
ラウトさんはちょっと溜め息を吐いて、魔法の灯を前方へ飛ばす。灯はしばらくすると消えたが、ラウトさんがもうあたらしいものを出しているので、なんの問題もない。
隠し通路のつきあたりは、小さな木の扉になっていた。ラウトさんがそれを開けて、滑り台で遊ぶような格好でなかへ這入る。俺も真似した。
すぐに足が床を踏み、俺はまっすぐに立った。
資料室のようなところだ。資料庫と違い、天井が高い。待ち構えていたらしい図書館員の先輩が、ほっとした顔で駈け寄ってくる。「マオ、ラウト、ありがと」
「運ぶものは?」
「ここの全部だって」
ラウトさんがうえーと云った。




