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資料庫は、ぐねぐねと曲がる隠し通路の先にあった。
扉はなく、アーチだけの出入り口を通って這入る。ひろがった光景に、思わず息をのんだ。
天井は、3mあるかないか、くらい。想像よりもずっと低い。とりつけられた灯はなく、魔法の灯が数個ういているだけで、くらい。それもあってか、天井がのしかかってくるような感覚がある。
ずらっと、角を丸くした長方形のテーブルが並んでいた。短い面をこちらへ向けて、間隔を開けて一列に、見える限りではむっつ。すべてのテーブルに誰かついていて、資料をひろげて睨みつけているか、なにかを書いているか、ひたすら資料をめくっているかだ。なかには、見覚えのある先輩や、先生も居る。智慧者だったんだ、と驚いた。
資料庫は、俺達が這入った出入り口近くからでは、全容が見えない。テーブルの近くはスペースがあるのだが、少し離れると威圧感のある黒い書棚がずらっと並んでいるので、見えないのだ。書棚は頭が天井にくっついていて、はしごがかかっていたり、傍に脚立が置いてあったりする。
書棚同士もすきまなく並んでいる、というか、もしかしたらこれだけ横に長い書棚なのかな。わからん。ただ、出入り口のある面の壁には、書棚は接しておらず、そこは移動する為につかわれているようだ。今も、険しい表情の奉公人がそこを通ってテーブルに走っていった。
ちらっと見てみるが、横方向もどれくらい行けば壁に当たるのか、わからない。見えない。これは建築に時間がかかったってしょうがないだろう。これだけの空間を、耐久性に配慮してつくるなんて、俺なら百年かかったってできない。
「エイジャ、開いてる棚はこっちだよ」
はっと顔を向けると、ドゥロブさんが左方向から歩いてくるところだった。エイジャさんがああと云う。
「マオ、大丈夫か? とっととひきわたして、帰ろう。明日に備えてしっかり寝んでもらわなくちゃいけないから」
「あ、はい」
ドゥロブさんも智慧者なのかな?
俺はエイジャさんにひっぱられて歩く。ドゥロブさんは先頭で、はきはきと喋る。「エイジャ、もう二階には行った?」
「行った」
「なんだ、もっと綺麗に棚が配置されてて見物だよって云いたかったんだけどな」
ここが何階かはわからないが、複数階ある場所らしい。それにしても、……紙、羊皮紙、本、の洪水だ。俺が移動しているのに、棚が波のように打ち寄せてくるみたいに感じる。こんな場所、御山のどこにあるんだろう? 凄すぎる。




