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エイジャさんは鼻を鳴らした。「建築ってどうしてあんなに時間がかかるんだろうな。図書館の増設に三年、資料庫の増設にはあわせて二年以上かかってるんだ。途中で丸三年中断してたけど」
成程、資料庫の増設の途中に、図書館の増設工事が始まり、資料庫のほうが一旦中断した、ということらしい。たしかに建築って時間がかかるよねえ。
エイジャさんはまだしばらく、資料庫やここの資料についてぶつぶつと喋り、はしごを下りてきた。はしごを別の棚へかけかえ、そちらの資料も持って下りる。俺はやることがなく、黙ってエイジャさんの後ろ姿を見ている。
エイジャさんは肩越しに俺を見て、くすっとした。
「べらべら喋って、悪い」
「いえ」
「……ちょっと動揺してるんだよ」
エイジャさんはそう云ってから、ふんと鼻を鳴らした。「自分のいやなところが見えてる。ああ、マーゴさま、なんだか大人になったなあって思ってさ」
俺は本当にやることがなくて、お茶を淹れはじめた。エイジャさんが笑っている。「マオにはかなわない」
「なにがです?」
「みんな、俺にラスターラ卿のこと訊きたいみたいなのに、マオはそういうのないだろう」
「ありますよ」
「だとしても見えない。マオは自分の気持ちを覆い隠すのが上手で、羨ましいな」
皮肉ではなく本音らしい。俺はマグへお茶を注ぎ、ざらめをいれてとかす。エイジャさんのところへ運んだ。「どうぞ」
「ありがと」
エイジャさんはマグをうけとって、はしごの途中でそれを飲む。俺は自分の分のお茶をふうっとして、すする。それから収納空間の口をひろげた。
「エイジャさん、ここに落としたら、勝手にはいりますよ」
「君は本当に規格外だな」
エイジャさんは心底から楽しそうに、くすくすと笑った。
それから、資料をばさばさと落とす。収納空間はそれらを、全部吸いこんだ。俺はマグのなかを見ている。
「マーゴさま、まだ子どもだったんだなって思ったんだよ」
「はあ」
「なんだか疲れて見えたな。お元気なのかな」
「ラスターラ卿、お忙しいみたいですけど、お元気だと思います」
「でも相当老けちゃったよ」
エイジャさんはちょっと笑う。でも、その声が湿った。見ると、ういた涙を拭っている。「まだあんなに疲れたみたいに見える歳じゃ……ごめん」
「いえ」
「マーゴさま、あんな感じじゃなかった。まだ子どもだったんだなってよくわかった。俺、ばかだからさ、大人は頼りにできないとか信用ならないとか、ひねてたんだよ。よく考えたらわかることだよな。俺多分、あの時のマーゴさまよりも歳上になったけど、マーゴさまみたいなことはできないと思うから」
感想ありがとうございます。
今年中には物語がそれなりに動く予定です。
ポメラ一回初期化しちゃってから()なのか()なのかわからなくなって()にしてたんですがが多分()をつかっていた気がするんのでなんか変になってたらすみません。




