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ぼーっとしていると、ラウトさんが来て、俺は厨房の奥へ移動した。例のお部屋に呼び出されたのだ。俺はなんのお仕事かとか、どういう集まりかとかは訊かず、黙ってラウトさんについて行った。
「マオ、疲れてるとこ悪いけど、これ運ぶの手伝ってくれ」
お部屋にはエイジャさんしか居ないし、ラウトさんは用事があるそうで、すぐに踵を返して居なくなってしまった。俺はラウトさんを見ていた顔を戻し、エイジャさんが立っているのをあらためて認識する。
エイジャさんは、資料の詰まった棚を示している。ここ最近の事件や事故の資料と、記録だ。それには、事件や事故に関わった当人の能力証の写しや、履歴書、事件や事故のタイムラインだけではなく、強制下山後荒れ地おくりになったトリエーリ嬢の家系図まで含まれている。
御山の情報収集能力を舐めてはいけない。それが、事件や事故が起こらないと発揮されないものであることを、俺は天に感謝すべきなのだろう。
エイジャさんは棚を軽く撫でる。「中身を資料庫へ持ってく。増設がすんだらしいから、今のうちにやっつけときたい」
「はい」
姿勢を正した。
資料庫とは、多分、御山に関する資料がすべて収められているらしい場所のことだ。
俺は収納空間の口を開き、エイジャさんと一緒にそこへ資料を叩きこむ。棚の上のほうは、エイジャさんがはしごにのってとってくれた。「ほんと云うと、八月までにここは綺麗にしておくものなんだ」
「そうなんですね」
「ああ。まったくいらいらするよ。紙、紙、紙」エイジャさんは羊皮紙の束をまとめて持ち、はしごを器用に下りてきた。「勿論、資料庫にも同じ資料はあるんだけどね。なんにでも控えをとっておかないと不安なのが御山なのさ。それに、単なる本とは違う。破棄するのだって簡単じゃない。なら、全部とっておくのが安全だって判断だ。それでも、あんまりにも古いものは徐々に還元してるけど、還元する時にだって決まりがあるから面倒だし」
エイジャさんは羊皮紙の束を俺の収納空間へいれ、もう一度はしごへのぼっていった。俺は棚の下のほうにある資料をとって、収納する。
「去年、一昨年と、まともに片付けできなかったもんだから、棚がこんなになっちまって。ああマオ、あっちも片付けるから、先に下のほうやっといてくれ」
「はい」
「ずっと、図書館の増設でたて込んでてさ。それに、不要な本の処分も大々的にやった。それで、資料庫はしばらくほったらかし。木工作業場のやつら、片手間仕事はできないなんて云いやがる」




