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エイジャさんがこほんと咳払いする。「メイリィ、丁度よかった。君にも、傍に居てほしいって要望が来てる。スフィザさまとターカック嬢だ。明日、ほかの業務は停止して、指示に従って湖の傍まで来るように」
メイリィさんはこっくり頷く。あのカップルと親しかったんだ、メイリィさん。なんか意外。
エイジャさんも頷いて、じゃあ、と片手をあげ、厨房へ這入っていった。
「マオ、凄いね」
「サフェくんもメイリィさんもだよ」
「でもマオは、今日もサキさまの宣言に付き添ったんでしょ」
サフェくんはうきうきした様子で、カットしたパイ生地の上にお魚の切り身をのせる。ローズマリーの粉末をお匙ですくい、やっぱりうきうきした様子で切り身にふりかける。
結局、メイリィさんも一緒に、俺達は厨房の一角をかりてお料理していた。メイリィさんはローストビーフをつくっていて、サフェくんは「セティさまが食べたがってるから」と、魚のパイ包み焼きに挑戦している。俺はふたりを手伝うばかりで、なにかつくってはいない。なにをつくろうかと考えると、頭がまとまらなくなるからだ。
サフェくんが千切りのバターピーナツを指さす。
「マオ、これもいれるの?」
「俺はいれたほうが好きだけど、いれなくてもいけるよ」
サフェくんはちょっと考えて、こっくり頷いてから切り身の上に千切りバターピーナツをのせた。ぱたんとパイ生地をたたみ、端をフォークでおしてくっつける。チョコがあったら、チョコをいれておいしいお菓子にできるんだけどな、と、思った。ほーじくんに、チョコを食べさせてあげたいな、とも。
ローストビーフがオーブンから出てきて、サフェくんがお魚のパイを焼きはじめる。俺達は調理器具を洗い、乾かして、並んで椅子に腰掛ける。ローストビーフはさましているところだし、お魚のパイはじっくり焼いている。「セティさま、お魚、最近好きなんだって」
「へえ」
「僕がお握りに、マオから分けてもらった、お魚を煮たやつをいれたからだって」
サフェくんは嬉しそうだ。
サフェくんには、かつおでんぶお握りのつくりかたを伝授したのだ。その時につくったお握りを、セティさまへさしいれたみたい。初めて会った時はセティさまに怯えていたのに、サフェくんは今、セティさまを猫かわいがりしている。
嬉しそうなサフェくんに、俺もなんだか、嬉しくなってくる。ずっとこんなふうに楽しい時間が続いたらいいのにな。みんながしあわせで、みんなが楽しく過ごせたら。




