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広間はにぎやかだった。知らない顔が幾つかある。先輩達がクッキーやケーキを運んだり、なにか喋りかけていた。見知らぬひと達は、全員、戸惑った様子だ。「あ、マオだ」
「サフェくん」
サフェくんが、マグの並んだトレイを持って、厨房から出てきた。厨房へ向かっていた俺と、向かい合うような格好になる。「ちょっと待ってて」
そう云って、知らないひと達のテーブルへトレイを運び、ふた言くらい喋ってから、こちらへ戻ってきた。
サフェくんは俺のローブの袖を、ちょんとつまんだ。それから、目で例のテーブルを示す。
「今日うかったひと達」
「え、もう来たの?」
「うん。全員、そういうふうに、ジアー先生に申し出たんだって。ふたりくらい、お金がほとんどないのにぎりぎりまでレントで粘ってて、もう宿賃もないらしくてさ」
「ああ」
レントは素泊まりの宿だと、銀貨一枚、もしくはエスター数十個で泊まれるらしいが、そういうところはお値段相応のセキュリティと治安である。なにかあっても自分で対処できると思っているような、能力値に自信があって割りと好戦的なひとが泊まっていることが多い、らしい。
折角試験にうかったのに、御山へ来る前に喧嘩に巻きこまれて怪我をしたり、死んでしまったりしたら、悔やんでも悔やみきれない。それで、お金がないひとがもう御山に行きたいと云いだし、ほかが(どういう理由かはともかくとして)同調した、ということみたいだ。
「お部屋、丁度綺麗になったばかりで、よかったね」
「ねえ」
サフェくんはにこっとする。昨夜は、私兵達も一部はこちらに泊まったので、普段つかっていないお部屋もきっちりとお掃除された。勿論、普段からお掃除はしているが、昨夜ひとが寝起きできるように調えたばかりだから、タイミングは最高だ。それもあって、ジアー先生が要望を受け容れたのかも。
「サフェ、やっと見付けた」
広間にエイジャさんが這入ってきて、さーっとこちらへやってくる。サフェくんがきょとんとした。さがされる心当たりがないらしい。エイジャさんは微笑み、サフェくんの肩を叩く。「フォグオンさま、スルさまから、明日の宣言、傍に居てほしいと申請があった」
「え? ……え?」
「おめでとう」
びくっとする。
いつの間に居たのか、メイリィさんが傍に居た。さすがのエイジャさんも吃驚しているし、サフェくんはひっと息をのんでかたまった。メイリィさん、隠密持ちなんじゃ? と思うようなことがたまにある。
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