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マイファレット嬢からも、傍で待っていてほしいと頼まれ、俺は明日も湖の傍で座って待っていることになった。お弁当を用意しよう。
マイファレット嬢と手を振って別れ、サキくんと再び歩く。噴水のところではラウトさんが待っていて、サキくんはそれじゃあまたと云ってからロア寮へ向かう。俺はサキくんの後ろ姿に手を振り、振り返ったサキくんもそうしてくれた。
ラウトさんと手をつないで、奉公人の寮へ戻る。「試験、どうでしたか?」
「ん、上々だったみたい。家政職が何人かと、料理人もうかったよ」
ラウトさんはそう云ってから、ふっと表情を曇らせた。「ルクトが本調子だったら、あの子が希望してたとおり、厨房担当にしてあげるつもりなんだけどね、ジアー先生」
なんとも云えず、俺は頷く。ルクトくんは、トゥスミア先生のことがまだショックで、立ち直れていない。くわしい話は聴いていないが、縫製室で何度か気分が悪くなり、早退したこともあるそうだ。そういう状態では、ひとの口にはいる食事を扱う部署へは、まだ配置できないと、そう判断されているのだろう。
隠し扉から奉公人の寮へ飛び込むと、エイジャさんが壁に凭れて待っていた。「よ、マオ、ラウト」
「なに、エイジャ、お出迎え?」
ラウトさんが軽く返す。一昨日の、ラスターラ卿とエイジャさんのことは、もうみんなが知っているのだと思う。
エイジャさんはくいっと首を傾げた。「マオに報せ。今日はもう休み。それから明日、宣言をするお嬢さんがたが、マオに傍に居てほしいって申請した。マイファレット嬢と、リオさまだ」
あ、リオちゃんもなんだ。そういえば今日は、リオちゃん居なかったけど、どうしてたんだろう。
ラウトさんが俺の手をぶんぶんした。「マオ、凄いね! いろんなかたに信頼されてて」
「はあ」
俺はラウトさん、エイジャさんと一緒に、廊下をすすむ。すぐに玄関広間だ。俺はふたりから逃げるみたいに洗面所へ行って、手を洗い、うがいをして、ついでに顔も洗った。
広間へ向かう。休んでいいなら、厨房をかりてなにかつくろうと思ったのだ。いつ来るかわからない、俺が御山を去る日の前に、ほーじくんにはなにかおいしいものを食べさせたい。ほーじくんの好きなものは、葉物野菜、雑穀。甘いものは、あんまり得意じゃないみたい……。
不意に、猛烈な淋しさが襲ってきて、俺は目許を拭った。いつだろう。俺はいつ、御山から逃げ出すんだろう。
どうしてもそんなことしないといけないのかな。




