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 ジーナちゃんとミューくんが一緒に帰り、リッターくんとユラちゃんも図書館へ行った。俺は試験終了の鐘の音を聴きながら、サキくんと、噴水まで歩く。そこでラウトさんが待っていて、一緒に奉公人の寮へ戻る予定だ。

「戦士になって、やっぱりよかった」

 サキくんがひとりごとみたいに云った。「僕は友人に恵まれてると、あらためてわかりました」

「ユラちゃん、優しいね」

「はい」

 サキくんは嬉しそうににっこりして、俺の手を掴み、軽く振る。俺もにこにこしてしまう。サキくんがここまで露骨に嬉しそうなのは、めずらしい。この子はなんでも押し込めて、我慢してしまうから。

「ユラを妻に迎えられるひとは、しあわせでしょうね。いや、彼女の場合は、婿をとるかな?」

「マオさん」

 進行方向から、マイファレット嬢が駈けてくる。顔が白い。かなり近付いてから、サキくんに気付いたみたいで、はっとする。

 サキくんは表情を引き締め、息を整えているマイファレット嬢へ云う。

「マイファレット嬢、どうかしましたか?」

「あ、いえ、あの……」

 マイファレット嬢は、両手でしっかりとずだ袋を抱え、小さく震えている。農作業をしていたのか、やわらかい金の髪には土がつき、短く切った爪と指の間にも土が残っている。くつは綺麗だから、はきかえたのだろう。

「わ、わたくし明日宣言することになりましたの」

 語尾が頼りなく震え、消えた。


 サキくんがマイファレット嬢に近付いて、彼女の手に自分の手を重ねた。「大丈夫ですよ、マイファレット嬢」

「あ……」

「僕は今日、宣言だったんです。先生がたが見ていてくださるし、こわいことはありません」

「そ、そうですの?」

 マイファレット嬢の声はまだ、震えている。サキくんは頷く。

「あなたはきちんと宣言をして、耕作人になれますよ」

「なら、いいのですが、わたくし、な、なんだかとっても、緊張していて」

 ひくっとマイファレット嬢はしゃっくりをする。俺は収納空間から、やわらかいショールをとりだし、彼女の肩にかけた。端っこをゆるく結ぶ。

「マオさん……」

「体を冷やすと、よくないですよ」俺はにこっと笑う。「マイファレット嬢、今日は好きなものを食べて、ぐっすり眠ってください。明日も、朝ご飯は好きなものばかり、奉公人にいいつけてください。なんだってつくりますよ。それで気分をよくすれば、たいしたことじゃないってわかりますから」

「そんなものですの?」

 不安そうなマイファレット嬢に、サキくんがしっかり頷いた。こうやって、他人を気遣えるサキくんは、立派だ。


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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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