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しばらくするとリッターくんは落ち着いたみたいで、離れていった。「すまん」
「いいよ」
「俺は……喋るのが得意じゃない」
だから、すぐに行動に移してしまうのだ、という意味らしい。リッターくんの口下手は知っているし、可愛いので、頭を撫でておいた。リッターくんはちょっとだけ赤くなって、顔を背けた。
社交室へ戻ると、ユラちゃんがノートをひろげ、サキくん相手に一席ぶっていた。「なんの話?」
「還元です」
遠巻きに見ているミューくんへ訊くと、そう返ってくる。ジーナちゃんが云い添えた。「巡らせる者で、還元士にならなかった場合でも、還元の力が強まることがあるのですって」
「へえ?」
還元は、ものを素に還す、こちらの世界ではなくてはならない行為だ。還元が少ないと世界がおかしくなると云われている。その力は、還元士にならないと強まらないと思っていた。
魔導士になると魔力が上がったり、戦士になると体力が上がるように、還元士になると還元の力が増す。そういうものだと理解していたのだけれど。
「丁度、還元のことも調べていたらしいわ。悪しき魂と関わりがあるかもと」
「え、そうなの?」
「そっちは望みがうすいみたいですよ」
ミューくんが小さく笑う。なんだ、吃驚した。
要するに、いろんな方向から悪しき魂を調べているということらしい。そういえば、一時期、絵本や童話集を大量に読んでいたっけ、ユラちゃん。
「だからね、あんたが戦士になったからって、還元にはそもそも関わりがないの」
「たしかに、還元の力が弱まってはいなかったよ」
「でしょう?」
ユラちゃんは胸を張る。「還元士になると力が強まるっていうのだって、個人差が大きいわ。要するに、還元をこなした数なのよ」
「そうか、還元士になれば、仕事として還元を依頼される。でも、ほかの職業だと、自分が出したごみくらいは還元しても、仕事で依頼されることは少ないだろうね」
「そうよ。だから、還元の力を強めるのには還元士だって話になったの。つまり、あんたがこれからも精進を怠らなければ、幾らだって還元の力は伸びるのよ」
ユラちゃんは満足そうに頷いた。「それに、一部の職業と巡らせる者は、統合することがあるみたいよ」
「僕はなんともなかったけど」
「これからそうなる可能性もあるじゃない。だから、あんたの判断は間違っちゃいないわ」
ユラちゃんは、結局のところそれを云いたかったのだと思う。サキくんが戦士になったことを、肯定している、というのを表明したのだ。
サキくんは微笑む。「君は、優しい女性だね、ユラ」
ユラちゃんがサキくんの手をひっ叩き、みんなちょっと笑った。いいなあ、こういうの。




