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「ミューだって、癒し手に負けない威力の恢復魔法をつかえるのに」
お皿を洗いながら、ジーナちゃんがぼそっと云った。
俺は平鍋で、ハンバーグを焼いている。パウンドケーキをしこたま食べた後だが、お食事は別腹だ。サキくんの食べたいものをききだして、つくっている。
「ミューくん、すごいもんね」
「ええ。癒し手にならずに、体力を伸ばしやすい職業を選ぶのも、いいと思う」
俺が否定しなかったからか、ジーナちゃんは急き込んで云う。だが、すぐに、静かに云い添えた。
「でも、彼は癒し手を選ぶの。神聖公の為に」
「そうだね」
ばかみたいな返事しかできなかった。ディファーズでは、祇畏士、癒し手、還元士になれるのであれば、それ以外の職業を選ぶことはゆるされない。できない訳ではないが、やったら捕まって処刑されたり、家族と一緒に国外追放になったり、そういう可能性がある。
ジーナちゃんはお皿を乾かして、こちらへやってきた。
「なにか、するわ」
「じゃあ、あくをとってくれる? とりすぎないくらいで」
「わかった」
ジーナちゃんは杓子をとる。スープがふつふつわいているお鍋から、あくを掬いとって、お水をはったボウルへ放つ。手際はとてもいい。
俺は表面を焼いたハンバーグを、ソースのお鍋へ移した。煮込みハンバーグだ。オーブンでは、先輩達がパンを焼いている。伝糸で一般寮と、奉公人の寮へ連絡をいれてくれたそうで、俺とサキくんが行方不明だなんて騒ぎにはなっていないらしい。
「ジーナちゃんは、ミューくんが癒し手になるのは反対?」
「そうじゃないわ……」
否定するが、歯切れが悪い。俺達はそれ以上、その話題を続けることは避けた。
煮込みハンバーグは牛・とりの合い挽きで、ソースにはスライスしたマッシュルームがたっぷり。マッシュルームが多いほうがおいしいし嬉しいよねえ。
スープは、お水とたまねぎと牛乳、それにとり手羽でできている。ジーナちゃんが丁寧にあくをとってくれたので、雑味が少ない味だ。
ピーマンとたまねぎを軽く炒めてバター酢醤油で味をつけ、あたたかいサラダにした。ワインビネガーのいい香り。
けしパンとライパンは、先輩達が焼いたもの。黄金色にかがやいていて、見ているとよだれが出てしまう。
デザートは、ジーナちゃんの好きなフルーツゼリーに、エディブルフラワーを加えた。おいしいし、見た目も綺麗だ。
社交室へ運んでいくと、みんな嬉しそうにトレイをさらっていく。サキくんミューくんが来ないので、さがすと、ソファに腰掛けていた。サキくんの斜向かいにリッターくんが居る。




