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噴水の辺りに、ミューくんが居た。
二年生の男子三人に囲まれ、そのうちひとりから腕を掴まれ、困った顔になっている。絡まれている、のかな。
サキくんが険しい表情で走っていった。「ミュー、僕を待っていてくれたの?」
「あ、サキ」
ミューくんが微笑み、サキくんと、鈍足ながら走っていく俺に気付いた。「マオさん」
「先輩がた」サキくんがにこっとする。「ミューになにか……?」
美少年の圧はもの凄いようだ。ミューくんの腕が自由になった。二年生三人は、怯えた様子でひとかたまりになる。
ミューくんが苦笑いして、サキくんの腕を優しく叩いた。
「サキ、大丈夫だよ。俺に治療してほしいひとが居るって話だ」
「ああ……どうするの?」
ミューくんは眉を寄せ、それから三人を見る。三人はちょっと項垂れ、申し訳なげだ。帝国寮の子達だが、三人とも一般家庭出身で、今は推薦状をもらう為に走りまわっている筈。
「先生に治してもらえば宜しいのではありませんか?」
思わず口をはさむ。三人は俺を見て、ひとりがもごもごと釈明した。「いや、そういう訳にはいかないんだ。御山に居る人間ではないから」
「どういうことです?」
サキくんが優しい声を出す。
三人は、シアイルの帝都出身で、同じ塾に通っていた。
同年度に三人も合格を出したというので、三人が合格した一昨年から、塾はもの凄く忙しくなった。忙しさが祟ったか、今年の初め、三人の恩師が倒れ、塾を別のひとに任せて療養にはいった。
だいぶ具合もよくなり、折角時間ができたのだからと、三人に会う為にレントまで来た。ところがレントで具合を悪くしてしまい、宿で寝ている。
この人物はかなり頑固で、お薬を服むことを拒否している。だが、癒し手は今のところ治療に成功していない。
なので、実技でもの凄い恢復魔法を見せているミューくんに依頼した、ということだそうだ。
「宣言順が突然繰り上がることもあるし」
ミューくんは肩をすくめる。「助けたいのはやまやまなんだけどね。だから、俺の知り合いへ、紹介状を書こうかって話になってた」
「僕達みたいな、貴族じゃない人間でも、まともにとりあってもらえるものなのかな」
三人は心配そうだ。シアイル寮内は、貴族と貴族以外とで、結構な溝があるからな。もと・貴族のスルくんでさえ、貴族の子達からはほとんど無視されている。
ミューくんがにこっとした。「大丈夫ですよ。癒し手は、具合が悪いひとを放っておけないんです。きっと治してくれますから。だれか、紙と鉛筆を持っていませんか?」
「持ってるよ」
そう云って、収納空間からそれらをとりだした。三人が目をまるくしている。




