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ぱっと顔を上げ、俺は瞠った目でサキくんを見る。
サキくんはいたずらがうまくいったような、嬉しそうな顔だ。
「これ……」
「ごめんなさい、きちんと話さないで」
サキくんは微笑んで、羊皮紙を再び丸めた。おかげで、御山で宣言をしたら能力証につくマークがどんなものか、見損ねた。
しかし……サキくん、還元士じゃなくて、戦士を選んだのか。いや、以前から、そういう道もあるんだって云ってたし、サキくんが自分の意思で選んだのなら俺はなにも云えないんだというのはわかってるけど、でも、驚いた。
サキくんが俺の手をひっぱる。再び、歩く。
「サキくん、それじゃあ、戦士科へすすむの?」
「はい。もう書類をつくっていましたし、戦士になることも決めていました。先生がたにもそう云って。だから、リッターとあんなふうになってしまっても、今更かえることはできません」
言葉に詰まると、サキくんはこっちを見て笑った。「建前ですよ」
「え」
「僕は、還元士になるのがいやだったみたいです。実際のとこ、還元士ではなくて戦士になり、二年目は戦士科へすすむと先生がたへ云ってしまったら、僕ほっとしたんです。先生がたが全然、反対しなくて、ああ、僕は還元士にならなくたっていいんだって、そう思いました」
それは……じゃあ、よかった、でいいのかな。
サキくんは前を向く。ゆっくりと、静かに喋る。
「還元がいやなんじゃないんです。還元して、ものを素にするのは楽しいし、世のなかの為にもひとの為にもなる。還元が役に立つのも、なくてはならないものだというのも知っていますし、……でもそれは、還元士にならなくたって、できることなんですよ。僕はもう、充分なくらい、いろんなものを還元できるのに、親に還元士になれと云われて、そういうのにうんざりしてた」
「たしかにサキくんの、還元は、凄いね。ターツァさんも誉めてたし」
「でしょう? 僕、凄いんです」
サキくんはちょっと笑う。
少し間があった。
「だから、これは親への反発でもあるんです」
「反発」
「ええ。僕は自分の意思で職業を選んだ。そのことを後悔していませんし、誰にも否定させません。僕の職業は僕が決めるべきなんだ」
サキくんの声は、意固地になっているようでも、すねているようでもない。すっきりしている、という感じだ。
「それに、いやいや還元士になるのは、世のなかの還元士に失礼でしょう?」
「そうだね」
自分で決めることができるのなら、自由にしていい筈だ。
誰でも。




