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タイティーダさんはもごもご、云う。「先生がたが試験だから、ないと思ってたのよ。だからジアー先生もマオを行かせたの」
そういえば、シシース先生は下に居る。証人は足りるのだろうか。それに、ガロア先生やジアー先生も、こういう場には立ち会うのでは?
「サキくん、突然で、不安でしょうね」
「そうかもしれないけど、サキさまがとにかく一刻もはやくって申し入れて、今からになったらしいよ」
え?
タイティーダさんは俺をおぶいなおし、速度を少し上げる。「シシース先生に立ち会ってもらえないなら後がいいって云いだすかたが多くて、今日の午前は宣言なしの予定だったのよ。先生がたも、立ち会う証人や神おろしについては、できうる限り要望を聴いてあげたいからって」
「じゃ、そのあいた時間に、サキくんが宣言することになったんですか」
「そ。もともと、今日明日にも宣言するって決まってたのも、成る丈はやく宣言したいって、サキさまが何度もエルセイユ先生にかけあったからみたい」
ああ……。
そうかあ。巡らせる者をあれだけつかいこなして、還元士志望だから、もっと後じゃないとおかしいと思ってたんだ。
サキくん、こわいことははやくすませてしまいたかったのだろう。でも、日程が決まったらそれはそれでこわくて、不安で、動揺して……。
職業をかえられない、というのは、凄くおそろしいことだよな。宣言する時にはとてもいい職業だと思っても、実際なってみたら思っていたのとは違うかもしれない。それでも、職業をかえることはできないのだ。
適職がわかってから、どれがいいか占ってもらったり、職業をはやくに決めてそれに有利になるように鍛錬したり、みんな努力してる。それでも、自分がこれから一生付き合う職業を決めるのだから、こわいに決まっている。
でも、エルセイユ先生にかけあう? 宣言をうけもっているのは、エルセイユ先生なのかな。
タイティーダさんはそれからあまり喋らず、俺も相槌を打つだけだった。
湖を囲む森が見えた辺りで、おろしてもらった。そのまま、ふたりで並んで歩く。俺は弱っちいので、ずっと、ひとり行動禁止である。
森に近付くと、ズフダリフ先生が居た。「マオ、やあ、はやかったな」
ズフダリフ先生は俺の腕をとり、タイティーダさんに頷く。
「たしかにひきとった。君は持ち場へ戻り給え」
「はい」
タイティーダさんはお辞儀して、踵を返して走っていった。俺はズフダリフ先生と腕を組み、湖方面へ向かう。といっても、俺は湖が見える距離にまでは近寄れないのだが。




