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これって、疎蕩者と修復者のどちらを重視するかってこともあるんじゃないかなあ。
ぼんやり考える。
疎蕩者は性別の垣根を簡単にのりこえさせることができるから、性別を誇示している人間を嫌う、らしい。
修復者は、あらゆる運を与える。その恵みは、男性ならば髪、女性ならば歯に強く注がれる、と考えられている。
歯は、運がどうのこうのがなくても、男女限らず大事にするものだろう。歯そのものがなくなってしまったら、癒し手でもどうにもできないようだし、そもそも歯が痛いだけでも相当なストレスになる。歯がなくなっちゃったらご飯をおいしく食べられないし。
けど、髪は短くても困らない。極端なことを云えば、また伸ばせばいい。だから男の場合、疎蕩者にまもってもらいたい時には短くして、修復者の恵みがほしい時には長くして、ってことができるかも。そういう変節は、だめなんだろうか。
髪の短い男性を、特に髪の長い男性が避けるのは、修復者にそっぽを向かれたくないからな気がする。髪を切るのに長けた職業だって嫌ってるんだから。
メイリィさんが俺のローブをくいっとひっぱった。見ると、メイリィさんは目で、俺達がつかった出入り口を示している。そちらへ目をやると、アロさんが居た。
手招かれている。俺はメイリィさんに低声でお礼を云い、そちらへ移動する。
「なんですか?」
外に出てからアロさんに訊くと、彼は山道の方向を指さす。「マオだけ戻ってって。サキさまの宣言順が繰り上がったんだ。今、上から、迎えがおりてきてる」
「あ、はい」
「一の門まで行けば後は負ぶってもらえるから」
「わかりました」
頷いて、一の門へと走った。すぐに歩きになったけどね。だって走るのつらいから。
試験中は、外部の人間が空き間に堂々と這入ることができる。
それもあって、ふたりか三人の私兵が、何組もうろうろしていた。なかには、いつもは上で家事に精を出しているひと達も居る。体力の高いひと達だ。私兵の鎧と剣を身に着けて、まとまって歩き、俺に気付くと片手をあげて挨拶してくれる。
俺も同じ挨拶を返し、息を切らして小走りに進んだ。試験の最中、巡回は凄く増える。ついでに、天幕の周囲には補助教員や事務の先生が居て、天幕を出た後に素直に二の門から出て行こうとしない人物を捕まえ、放り出すという任務に就いている。
背後から大きな声が聴こえた。方向からすると、私兵用の建物だろうか。誰かが這入りこもうとしたらしい。そんなことをしたら、一発で試験を落とされて、何年か、もしくは永久に御山へ近寄れなくなるのに。




