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せっけんは色ごとに分けて、ばけつに積み上げた。
切ったばかりのオリーブせっけんは、断面が綺麗な緑色で翡翠みたいだ。パーム油のはオレンジっぽい赤、ひましのは半透明、牛脂のはまっしろ。
なかには香りのついたものもまぎれこませてある。どのせっけんを選ぶかも、選考基準のひとつらしい。誰のものかわからないのに、勝手な判断で香りつきのせっけんをつかったり、そもそも無頓着でつかってしまったりしたら問題だ、ということらしい。
それと今回は、お洗濯に向いた、ケイ酸塩いりのものも紛れている。といっても、pHが高めなので、絹なんかには絶対につかえない。そういった判断力も求められるのだ。
すべての準備が整い、たらいと汚れものが運び出される。せっけんは、誰かが希望しないとここからずっと動かない。必要なものがない時に云えるかどうかが、実は奉公人にとって一番大切なことだったりする。
「なんか、大変なんですね……」
第一陣を運び終え、先輩達が戻ってくると、俺達のようにかりだされていたサレテットちゃんがぼそりと云った。彼女の同期ふたりも、こくこく頷いている。
俺とメイリィさんは目をあわせ、少しだけ苦笑した。
「そうだね。俺も、自分が試験をうけた時は、後ろでこんなにばたばたしてると思ってなかったよ」
「そういうの、みんな、見せないから」
メイリィさんが云い、サレテットちゃん達が頷いた。
天幕から出ていたアロさんが戻ってきた。鐘の音がやんでいるが、試験終了の鐘はまだ鳴らされていない。
「マオとメイリィ、シエラ、ドゥロブとトローム。せっけん運んで」
「諒解」
トロームさんが応じ、俺達はばけつの把手を掴んで、せっけんを運び出す。すぐ近くの、一番大きな天幕が、試験場だ。
トロームさんを筆頭に、俺達は静かにその天幕へはいっていった。今日も、俺、メイリィさん、シエラくんはピアスをしていないので、ざわっと空気が震える。うぬぼれてはいない。実際、俺達が姿を見せた途端に空気がかわった。
もしかしてこれも、試験のひとつ?
せっけんのはいったばけつを、教官達が並んでいるその傍へ置く。今回は、ガロア先生、ジアー先生、シシース先生、チハル先生、それにパーラ先生とヴェーテッロ先生だ。ヴェーテッロ先生が俺に気付いて、可愛らしく片手を振ってくれた。
受験生達が、せっけんをとりにやってくる。俺達の運んだばけつからとるひとは少ない。あらら、お洗濯に向いてるケイ酸塩いりのものや、油に強いパーム油のものは、俺達が運んだばけつにはいってるんだけどな。




