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七月八日、俺がこちらに来てから659日目。
臨時で同室になった俺達四人は、昨夜遅くまで試験準備で忙しかったのに、どうしてだかはやくに目を覚ましてしまった。こうなると、眠れない。なので、俺達は用を足しに立ち、それからお風呂へ行った。昨夜は時間がなくて、みんなきがえただけだったのだ。
収納空間からお湯とお水を浴槽へ注いで、温度を調整し、サローちゃんの入浴剤を垂らし、俺達はゆっくりお湯につかった。匂いでわかったのか、物音が聴こえたか、ほかのピアス穴のない奉公人達がやってくる。皆さんもどうぞ、というと、嬉しそうにお風呂にはいってくれた。
「昨夜、慌ただしかったね」
「実技もあるんだってさ」
奉公人の試験における「実技」とは、お皿洗いとかお洗濯とかだ。俺達は、メイリィさん以外、ちょっと困ったみたいに笑ってしまった。
誰かが浴室の戸を軽く叩く。みんな、肩までお湯につかった。これはメイリィさんもそう。ピアス穴なしの短髪男性の、身をまもる為の処世術である。
「おしらせ」
外からアロさんの声がした。みんな、緊張を解く。「なんだよ、アロ」
「マオ、メイリィ、シエラ。実技用の汚れもの、せっけん、たらい運びと、試験の補助をやるように。文句はジアー先生へどうぞ」
アロさんは疲れたように云い、どうやら立ち去ったらしい。
名指しされなかったひと達が、気の毒そうに俺達を見た。俺、メイリィさん、シエラくんは顔を見合わせ、俺とシエラくんは溜め息を吐く。
お風呂を出て準備をし、すぐに広間へ向かった。奉公人が、普段からここに居るひとも普段は空き間に居るひとも、いりみだれて朝ご飯を食べている。人数が多いので、ばたついた雰囲気だった。
すでに、奉公人募集の鐘は鳴り始め、試験はすぐに開始される。俺達に時間的な余裕はない。俺とシエラくんは先輩の指示で必要なものを持ち、大慌てで外に出た。そこから、シエラくんは私兵のひとりに、俺はメイリィさんに担がれて、移動だ。山道まではすぐだったが、山道は朝露でしっとり濡れていて、転んだら大事なので速度が鈍る。
なんとか空き間につくと、鐘の音が鳴るなか、俺達は昨日、私兵用の建物の前で番をしていた私兵に案内され、天幕のひとつに飛び込んだ。そこで、先に来ていたアロさんに命じられ、実技で必要なものを奉公人達に渡していく。勿論、汚れものといっても、どんな腕前のひとが居るかわからないのに入山者のものは渡せない。全部、俺達奉公人のものである。




