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「あの時、あの……」
ワウラさんは、しぼりだすように云う。「あのひと。警邏隊がどうこうって、あんたと、話してたじゃない」
断片的に聴こえていたらしい。俺は肯定しようか否定しようか、迷う。
返事をするひまはなかった。
「危険なら、手伝わなくっても、いいでしょ。なんだったら、あたしから警邏隊に伝えてもいいよ」
ワウラさんは、ツァリアスさんをはっきり見なかったのだろう。ツァリアスさんは、ピアスをつけてはいないが、ピアス穴はある。
それに、ワウラさんは、俺みたいにピアス穴がない男性が、復讐で親を殺した事件を間近に知っている。だから、俺とツァリアスさんが話していたことも、そういった内容だと思ったのだろう。
「大丈夫だよ」
俺は低く、云う。「危ないってのも、ツァリアスさんが心配性なだけだから」
「でも……」
「ほんとに、大丈夫」
ワウラさんは黙り、それ以上追求してはこなかった。
今日は、ひとが多い。なので、俺とメイリィさんが同室になった。ベッドが足りないらしいので、まだまだすきまのある俺のお部屋に、収納していたベッドを二台設置して、レーイチくんとシエラくんも同室になる。
ベッド、まだ御山へ来る前に、ちょっとがたつくやつがお安く売っていたから、つい買ってしまったのだ。下にじゅうたんを嚙ませて、がたつき対策はばっちり。
「マオさん、綺麗にしてますね」
「そうかなあ」
ベッドにマットレスを敷いて、シーツをかけ、クッションを置いた。レーイチくんとシエラくんは、持参した毛布を手に、俺のお部屋のなかをきょろきょろ見ている。「はい、できたよ」
「あ、すみません、じろじろ見ちゃって……」
ふたりはぺこぺこして、ベッドに毛布を置いた。全員、すでに寝る準備は調えている。
メイリィさんは、俺がつかっているベッドに腰掛けて、ベッドサイドテーブルを見ている。その隣に腰掛けた。「同じベッドで寝る?」
どうしてだか、ベッドなんて高価な品物が一般家庭にごろごろしている世のなかだが、家族や友人同士で同じベッドで寝るのはかまわないのじゃないかな。もとの世界でも、二百年くらい前なら普通だったみたいだから。
メイリィさんは俺の質問には答えず、こちらを向きながらベッドサイドテーブルを示す。「あれは?」
メイリィさんの指が示したものを見た。小壜だ。ああ……。
俺はにこっとする。「ないしょ」
特別な業務をこなすチームの一員である証だ、とは、幾ら同期相手でも云えない。
メイリィさんは小首を傾げたが、もうなにも聴いてこなかった。レーイチくんとシエラくんが小壜を見ているのを感じる。




