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アロさんはごちそうさまをしてから天幕のほうへと歩いて行った。サフェくんが戻って、お茶とホットミルクを補充する。
「みんな、寒そうだけど、サフェくん大丈夫?」
「ずぼん二枚はいてる」
サフェくんはにこっとして、寒そうな私兵達にあたたかい飲みものを届けに行く。お手洗い大丈夫かなあ、と思ったが、巡回対策か、還元しやすいからか、お手洗いは空き間に幾つか点在している。問題ないだろう。
眠たくなってきた頃、設営が完了した。アロさんが手を叩く。「解散! 警護班は、今日は上で寝ること。広間で寝てもらうかもしれないけど、文句はジアー先生に云ってね」
一気に、空気が弛緩した。奉公人達は眠そうに伸びをしたり、せなかを丸めたりして、とぼとぼと山道へ歩いていく。
俺は出したものを片付け、サフェくんをさがした。
サフェくんは、ランスさんワウラさんと一緒に居た。俺は三人と合流し、業務は終わったと判断して、毛皮のローブをとりだす。
「どうぞ」
ランスさんとワウラさんへさしだした。
雪にでもならないと、奉公人は業務中にこういったものを着ない。決まりではないが、奉公人のローブがわかる状態にするのが不文律だ。
ふたりはそもそもローブを着ていなかったが、腰に佩いている剣は私兵に支給されるもので、だから剣が見える状態のほうがいいと思って、さっきまでローブをかそうとしなかった。
「あんがと」
「うー、あったかいねえ」
ふたりは変な遠慮をせずに、丈長の毛皮のローブをさっと羽織った。どちらも背が高いので、さまになる。モデルみたい。
ランスさんが片膝をついた。「ほらサフェ、負ぶってあげる」
「ありがと」
「はい、行くよ」
ランスさんはひょいっとサフェくんを負ぶって、山道へ向かった。ワウラさんがにやっとして膝をつく。「どうぞ、マオさん」
ワウラさんに負ぶってもらって、山道をあがる。
俺やサフェくん以外にも、負ぶってもらっているひとは居た。奉公人は助け合いだから、こういう時に遠慮するほうが適性がないとみなされる。ミアリくんがぼーっと、幽霊みたいなあしどりで歩いていたが、先輩がひょいっと横抱きにしてつれていった。体力よ。
ワウラさんがぼそっと云った。「ねえ、この間のさ」
ちょっと考えてから、うん、と返した。ツァリアスさんのことだろう。
ワウラさんはしばらく黙る。彼女が足を停めると、複数が俺達を追い越していった。
もう、山道を半分くらいあがっただろうか。少し先の角のところでランスさんとサフェくんが楽しそうに喋っていたが、曲がって見えなくなった。




