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「あれじゃあ、さしいれ、できないね」
サフェくんが残念そうに云う。彼が見ているのは、どんどん建っていく天幕だ。ただ、天幕が建ったらそれでお仕舞という訳ではなく、なかに這入って強度をたしかめたり、筆記試験もあるので机や椅子が運びこまれたりしている。あっちも一緒に運んだのにな、とちょっと思ったが、先輩達は俺の収納空間にものを詰め込みすぎたら魔力の枯渇を起こすとまだ思っている。心配して負担を少なくしてくれているのだから、ありがたいと思わなくては。
サフェくんを見た。
「できないこともないよ」
「ほんと?」
サフェくんはこちらへ笑顔を向けてくれる。俺は頷いた。
「俺、色々持ってるから」
ついっと収納空間の口を指でつくると、サフェくんはそれを見て、くすくす笑う。
「そうだね、マオは色々持ってる。でも、僕にできることがないよ」
「あるよ。サフェくんはお茶を淹れるのと、給仕さん。それでどうかな」
サフェくんは目をきらきらさせて、頷いた。
「あたたかい飲みものどうぞー」
サフェくんがトレイを持ってうろうろしている。私兵達がありがたそうに、トレイの上に置いてある湯気の立つマグをとり、中身をすすっていた。サフェくんは満足そうににこにこしている。
半分のマグの中身は、サフェくんが淹れたお茶だ。お茶っ葉とティーポットがあれば、水と熱源は魔法でなんとかするのがこちらの世界の人間である。
お茶はストレートで熱々だ。サフェくんがたまに魔法であたためなおしている。
甘いのが苦手なひとも居るだろうし、スパイスが苦手なひとも居る。そして、絶対にスパイシーで甘いお茶じゃないと飲みたくないというひとは少ない。だから、不満の少なそうなストレートティにした。
もう半分のマグは、ホットミルク。こちらもサフェくんにあたためてもらったもので、お茶と違ってはちみつが少しはいっている。眠くなってしまいそうだけれど、ホットミルクっておなかがぽかぽかして指先まであたたまる感じがするから。
サフェくんが、甘いのを飲みたかったらこっち、と、にこにこして奉公人達にすすめていた。
俺は少し離れたところで、勝手に出したテーブルの上を示し、たまに呼び込みをする。「軽食、ありますよー。あたたかいスープとサンドウィッチでーす」
私兵達がいそいそとやってきて、サンドウィッチの包みや、具沢山の豚汁がはいったマグを持っていった。ううー、豚汁おいしそう。俺も食べたいけど、どんどんはけてくから、つまみ食いのタイミングがない。
ああ、豚汁一杯くらいはつまみ食いの範疇にはいる。異論は認めない。




