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俺は収納空間に詰め込んである資材をすべて出すと、私兵用の建物へ走った。設営にかかっているみんなは疲れた様子だし、今は肌寒い。
地形の関係か、地質の問題か、レントは夜になると気温がぐっと下がる。だからあたたかいお茶か、ホットミルクか、もし食欲があるのなら豚汁でも飲んでもらおうと思い、厨房をかりられないか交渉するつもりだった。
後は、答案を渡す為だ。そちらに居るエイジャさんへ届けるようにと指示されている。智慧者の彼は、答案のコピーに参加するのだろう。もしくは、問題そのものに誤りがないか、確認する係かもしれない。
俺の(あたたかいものをさしいれたいという)意図がわかったか、同じく資材を運んできたらしいサフェくんが、追ってきた。「マオ、待って、僕も行く」
「サフェくん」
「僕じゃ設営の役には立てないから」
サフェくんはふんっと鼻を鳴らす。「ご飯があったら、お握りもできるよ」
「おお、頼もしいね」
私兵用の建物の前には、槍を持った私兵がふたり居て、周囲を睨みつけていた。相当に緊張し、警戒している様子だ。
俺とサフェくんが近寄ると、槍が目の前で交差する。
俺達は驚いて停まり、手を取り合った。サフェくんが小さく喘ぐ。「あの……?」
「すみません、マオさん、サフェさん」
私兵のひとりが申し訳なそうにそう云った。こちらは彼女の名前を知らないのだが、あちらは知っているらしい。ついでに、俺達は敬語をつかう相手だと認識されているみたいだ。
もう片方の私兵が云う。
「これからここで、試験用の答案をつくるんで、立ち入り禁止なんです。誰も通しちゃいけないし、俺達もここで立ってるだけで、なかに這入ったら謹慎だと脅されてて」
「ああ、はい、わかりました」
よく考えれば当然のことである。試験問題の流出なんて、それが奉公人の試験用のものだとしても、あってはならない。
俺は収納空間から、答案の原本をとりだした。10枚の羊皮紙は、綺麗に同じ形に調えられて、しかしサイズが大きいので俺の手には余る。
私兵のひとりが、俺の手からこぼれそうになったそれを掴んだ。俺は思わず笑う。「すみません。これ、ここに居るエイジャさんに届けるように云われてたんです」
「あ、そうでしたか。お疲れさまです」
私兵達の表情がゆるんだ。
「伝糸で誰か呼んで、届けてもらいます」
「わかりました。ありがとうございます」
頭を下げる。サフェくんも同じようにした。顔を上げると、私兵達も可愛らしくお辞儀している。
俺達はもう一度お礼を云って、そこから離れた。




