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サレテットちゃん達をつれて広間へ行くと、アロさんが声を張り上げているところだった。「というわけで、あした、急遽、試験を行う。今から設営!」
奉公人達の嘆く声がした。アロさんが喚く。
「僕だってこの忙しいのに試験なんてごめんだよ! しなくたっていいけど、そうなったらしばらくは寝ないで働いてもらうことになるからね!」
先輩達がぶうたれた様子で、しかしもう抗議はせずに、隠し通路へ移動していった。俺とレーイチくんは、近場に居たミアリくんをつかまえる。
「ミアリ?」
「あ、はい」
ミアリくんはぼんやりしていたが、頷いた。この子は普段、はきはきしているし、気も強いのだが、こうやって魂がぬけたようになる時がある。
「何人か、辞めるそうで、それで」
「この時期に?」
思わず咎めるような口調になった。だって、山道掃除が間近に迫ってるんだぞ。正気の沙汰じゃない。
ミアリくんは俺の剣幕にびくっとした。俺は謝る。
「ごめん」
「いえ……」
「でもどうして、今辞めるんでしょうね」
レーイチくんが云い、俺は頷く。ミアリくんが答えた。「フィラーサ先生が、御山は危ないって云ってたんだそうですよ」
なんとなくおかしな発音だったが、それは問題じゃない。
もう四ヶ月くらい経っているのに、今頃フィラーサ先生のこと?
レーイチくんと顔を見合わせた。ミアリくんはまるで誰かに喋らされているみたいに、亡羊とした顔付きで云う。
「山道掃除で、天罰がくだったのも、云ってました。それで、こわいって、辞めるみたい」
誰が云ってたとか誰が辞めるとか、ミアリくんはそういうはっきりしたことは云わない。だが、意味はわかった。
俺はレーイチくんともう一度顔を見合わせ、ミアリくんにお礼を云ってからアロさんの許へ走った。「アロさん」
「ああ、マオ、悪いけど、荷運びお願い。誰かに負ぶってもらって下まで運んで」
「いいですけど、誰か辞めたって?」
「本当だよ。誰が云いだしたのか知らないけど、フィラーサ先生の云ってたことが今頃むしかえされるなんて」
それは俺も同じ気持ちだ。
しかし、奉公人が一気に減るというのは、死活問題である。だから、俺はアロさんの指示どおり、先輩と一緒に外へ出た。
薄暮のなかを木工作業場まで行き、試験用テントを預かって、今度は教員寮へ向かう。そちらでは試験用らしい答案を預かった。今回は筆記試験もあるようだ。まだ問題を準備している最中だったのにと、突然の試験に先生がたも迷惑そうである。ちょっと尋ねてみると、次の試験は九月の終わり頃を予定していて、それに向けて若い先生達で答案をつくっている最中だったそうだ。




