3146
サキくんはもぐもぐと、後悔を口にしていた。生まれた国も違えば、同性で、しかも普段そんなに仲が好い訳でもないのに、その上云い争いの最中に、あんなことを云うなんて、と、すすり泣いている。
水薬を服ませた。壜は返してもらう。「サキくん」
「ごめんなさい。ごめんなさい」
小さな子どもみたいに謝るサキくんを、俺は両腕でそっと抱きしめる。それくらいしかできない。この子は真面目で、不器用で、可哀相だ。
「謝るようなことじゃないって」
「でも僕」
「ひとを好きになるのは、謝罪しなくちゃいけないことなの? じゃあ俺も謝らないとね」
サキくんは息をのみ、ぱっと俺を見上げた。「ちがいます、マオさんは……あの、違うんです、僕、マオさんを傷付けるつもりじゃあ」
「うん。わかってる。でも、自分を傷付けるのもやめてね。見てると死にそうな気分になってくるから」
俺がそう云うと、サキくんは泣き笑いの顔になった。
サキくんは魔法でお水を出して顔を洗い、俺が出したタオルで顔を拭いて、少しだけしゃっきりした。少なくとも、魔法をつかえるくらいには落ち着いている、ということだ。
「ご飯、食べそびれちゃったんじゃない」
「そうかもしれませんね」
小さく笑ってくれた。ぺたぺたと頭を撫でる。どうしてこう、ままならないかな。全部うまくいったらいいのに。
サキくんは俺の手を掴む。「ごめんなさい」
「いいってば」
「違うんです。僕、明日か明後日に宣言らしくて、それを聴いて、動揺してしまって」
「ああ……」
サキくんは巡らせる者を相当つかいこなしているし、志望は還元士だから、もっと後かと思っていた。
特殊能力と職業加護が合致しているから、還元の力がもっと強くなるのは自明の理だ。先生がたが放っておく筈がない。だから少なくとも、リオちゃんよりは後だろうと考えていたのに、サキくんが一番のりか。
サキくんは俺の手をぎゅっとする。
「僕は弱い人間だから、マオさんにもリッターにもやつあたりを」
「それくらいしてもいいよ」頷く。「リッターくんだって、サキくんに対して、きらいだとか、そんなこと云ってないし」
「なにが起こったのかわからないという顔でしたけれどね」
サキくんは声を沈ませたけれど、すぐにおどけた。「嬉しくてなにも云えなかったのかも」
「そうだね」
「そう考えますよ」
頷く。サキくんが無理をしているのは、見ていてつらい。けれど、今は、強がるしかないのかもしれない。
「マオ」
顔を上げると、気まずそうに立っているラウトさんと、レーイチくんが居た。




