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離れていったリッターくんの頭をぺたぺた撫でる。リッターくんは少しだけ目を細め、項垂れる。「すまん」
「うん?」
「突然、抱きしめるなど、すべきでなかった。俺は学んでいない」
はあ。
……あ、もしかして、初対面の時のこと、かなあ。
あの時、リッターくんにお説教しちゃったけど、リッターくんにはリッターくんの切実な事情があって、あんな辻斬りみたいなことをしたのである。いらいらしていたといえ、対応が大人げなかった。
「あの時はごめんって。俺、いらいらしてたから」
「そんなに、怒らせたか」
「リッターくんにも怒ってたけど、それ以外にもね」
首をすくめる。「だから半分やつあたりだよ」
通じたのか通じていないのか、リッターくんはもう一度、すまんと云った。
リッターくんの志望の職業はかわっていない。
手をつないで、林のなかを歩く。「護衛士以外には、なりたい職業、ないの」
「ああ。護衛士は、ひとをまもるのにあった職業だからな」
見る。
「そんなにひとをまもりたい?」
「傷付けるよりは」
リッターくんはそんな、答えのような答えではないようなことを云う。ただ、それがリッターくんの本音だというのはよくわかった。
俺達は随分歩いていたみたいで、最初は一般寮の裏手に居たのに、みちの近くまで来てしまった。「あ」
口を塞ぎ、とまる。マオ? とリッターくんも停まる。
聴きたくない声がしたのだ。あのひと、宣言まだ終わってなかったっけ?
繁みの向こうを覗く。シークンさまと、連邦寮の一年生が数名居た。表情が強張ったサキくんも居る。
リッターくんが堂々と繁みから出て行った。慌てて追う。
連邦寮生がこちらを向いた。サキくんが困惑顔になり、それから軽く下唇を噛む。
「ごきげんよう、ロヴィオダーリ卿」
唐突に繁みから出てきたリッターくんに対し、シークンさまは平然と挨拶する。連邦一年が数名、続いた。
リッターくんも平然としている。
「ごきげんよう。なんの集まりか、訊いてもよいだろうか」
「君には関わりのないことだ」
シークンさまの声は、感情が見えない。「君とマオがどうしてそんなところに居たのか、我々に関わりないように」
ほのめかしに、サキくんの目付きが凶悪になった。しかしリッターくんは頷く。サキくんは再び、困惑顔になる。
「そうだな。お前とマオは関わりない」
シークンさまがリッターくんを軽く睨んだ。このひとがこういう感情を見せるのは、なかなかない。




