316
汚れた食器を片付け、ふたりの席をつくった。グロッシェさんは、お皿を洗ってから、と袖まくりする。セロベルさんがそちらに加勢した。
リエナさんが席についた。
「いつもありがとうね。今日はそれがお代がわり」
リエナさんはにこっとして、木箱を示した。たまごの間に、ベーコンがでんと置いてある。お昼はカルボナーラにしようか。
リエナさんの分を用意し、調理に戻った。
定食を仕上げ、ワゴンへのせておくと、サッディレくんとアーレンセさんで運んでくれる。サッディレくんは軽口をたたく。「こっちでも働いてるんだから、給料上げてよセロベルさん」
お皿洗いをすぐに終え、グロッシェさんも席についた。まかないを用意する。
グロッシェさんの分は、レバー少なめで、パプリカ多めにしてある。フルーツサラダはチーズなしにした。「どうぞ」
「ありがとうございます」
声が少しだけかたい感じはするが、強く嫌われてはいないみたい。なんとなくほっとした。
トレイをのせたワゴンを、食堂へとおしていく。昨日は泊まりのお客さんが多かったので、朝から結構なにぎわいだ。
「おはよーマオくん」
ライティエさんの声にそちらを向き、おはようございます、と返そうとして、口をあんぐり開ける。
ライティエさん、メイラさん、バルドさん、ヨーくん、で、テーブルに着いている。隣のテーブルにはラールさんとマルロさん含め警邏隊が四人。最近よく見る光景だ。
が……バルドさんの、つやつやで長かった、綺麗なオレンジ色の髪が、ばっさり短くなっていた。しかも、ヨーくんは顔に傷ができている。
ワゴンをごろごろと押して近付く。バルドさんは下まぶたが黒ずんでいて、疲れた様子だ。顔も腫れぼったい。
「ど……どうしたんですか、バルドさん、ヨーくん」
「あれ? セロベルから聴いてない? あ、これわたしの分。もらうねー」
ライティエさんがトレイをよっつ持っていった。
見ると、バルドさんは両耳に沢山ピアスをつけて、重たそうだ。きらきらした金襴のヘアバンドと、豪華なネックレスまでつけている。
メイラさんも、自分の分のトレイをとって、テーブルへ置いた。「マオも気を付けなよ。試験の時期は変なやつが増えるからね」
「迷惑な話ですよ!」
ヨーくんはご立腹だ。子どもっぽい顔に険しい表情を浮かべ、隣のバルドさんの髪へ触れる。「こんなに綺麗な髪なのに、勿体ない」
「まあ……命があってよかったと思うよ」
バルドさんははりのない声で云って、弱々しく微笑んだ。




