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さがろうとするが、リッターくんはそれは察して、俺のローブの裾を掴んだ。リッターくんの腕力にかなう訳がないので、それ以上さがれない。くそ、さっさと逃げればよかった。
「ええっとお……あ、はい、あの、とても勇ましい戦いぶりでした」
「そのようなよそよそしい態度。相当怒っているのだな」
リッターくんはぼそぼそと云う。「そこまで怒らせるとは……いや、俺を嫌いになったのか、マオ?」
「は?」
「何度も迷惑をかけているし……約束も違えてしまったから……お前に嫌われたら俺は……」
リッターくんがどんどん項垂れていく。あ、やばいぞ。流石の俺でも解る。れいのあれ。
リッターくんは俺のローブの裾から手をはなし、そのまま綺麗に土下座した。
「申し訳ない。この通りだ」
口をぱくぱくさせる。この子はほんとに、行動原理が解らん。多少俺がよそよそしいくらい、なんでもないだろう。それに、奉公人だぞ? それと親しいって、多分笑われる類のことだと思うんだけど。
リッターくんは土下座したままだ。
「ごめんなさい」
「ロヴィオダーリ卿っ、なにをしてるんですか!?」
「奉公人風情にそのような……!」
学生達が駈け寄ってきて、リッターくんを起こそうとした。リッターくんは動かない。俺は、ごめんなさいって可愛いな、と、本当にどうでもいいことを考えている。いやだって、可愛くない? リッターくん謝る時って全力で謝るんだよね。
駈け寄ってきた学生が喚く。
「貴様、なにをにやにやしている!」
「ロヴィオダーリ卿にはじをかかせて面白いか?!」
え、嘘、俺にやついてた?
学生のひとり、女の子が、手を振りかぶった。平手打ちされる、と思ったら、別の学生が俺と女の子の間に割ってはいった。セティさまだ。「やめておいたほうがいい、センチュアライニ嬢」
「お退きなさいセルグライ!」きんきん声だ。頭に響く。「その奉公人はロヴィオダーリ卿にはじをかかせて、悦にいっているのよ! なんて無礼なことでしょう」
「こいつは優秀な奉公人で、そんなばかげたことはしません。それに、こいつとロヴィオダーリ卿の間になにかあっても、そのことに我々が口をはさむのこそ無礼じゃありませんか」
「その口を閉じなさい!」
センチュアライニ嬢はセティさまをひっぱたき、セティさまは横に倒れる。あ、っと思わず声がもれた。セティさまは左頬に手をあてて、痛そうに体を丸める。
センチュアライニ嬢の平手が、今度は俺の頬っぺたに叩きこまれた。
感想ありがとうございます。はげみになります。




