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ぽつぽつ、学生が集まってきた。二十人くらいだ。ふたりの決闘を見物に、だろう。俺の貧弱な観察眼に拠ると、七割程度がシアイルからの学生で、残りは連邦共和国。皆さんわくわくした様子だ。
誰かひとりでもいいから決闘とめろ。普通でも決闘なんて見たくないし、リッターくんは大怪我してからまだ半月経ってない。体を労らなきゃいけないんだ。
俺の願いも虚しく、帝国寮生らしい男の子が、すっと進み出た。「僕が立ち会います。どちらかが負けを認めるか、武器を失ったら決闘終了。それでいいんですね、ロヴィオダーリ卿?」
「ああ。サキ?」
「僕もかまわないよ」
ふたりは目を合わせ、軽く頷く。奉公人がちょっと離れたところにかたまっているのに、学生達に気にした様子はない。奉公人というのは、背景みたいなものなのだ。
リッターくんがこちらへ顔を向けた。目が合う。頷かれたが、意味はよく解らん。あの子ほんと、未だに謎な部分あるわ。
リッターくんの意図は解らなかったが、結局決闘は始まってしまった。腹のたつことに。
「はじめ!」
審判の学生が云う。と同時に、半身になったサキくんが杖を振りかぶった。あの杖は、殴打にもつかえるものだ。いつだったか、一緒に武器屋さんでお買いものした時のものと、似てる。
リッターくんは、振り下ろされる杖に怯まない。いつの間にかぬいていた剣の鍔でうけ、弾き返すとすぐさま剣を突き出す。サキくんはバックステップでリッターくんの突きを避けた。まじで決闘だ。
暫く打ち合いが続き、ふたりの動きを把握できなくなってきた。どうしてだか、同時にぱっと飛び退り、ふたりは睨み合う。
五秒くらいして、サキくんが飛び出した。杖が横薙ぎにリッターくんを襲う。リッターくんは体勢を低くして、下からサキくんの杖を叩いた。かんと硬質な音がして、杖がくるくると宙を舞う。体勢を崩したサキくんは、それでも杖を掴もうとしたが、間に合わなかった。杖は落ちる。
リッターくんが姿勢をただし、剣を納めた。
「武器を失ったな。俺の勝ちだ」
「……ろ、ロヴィオダーリ卿の勝利!」
審判が宣言した。帝国寮生らしい子達が湧く。しりもちをついていたサキくんは、リッターくんを睨みながら立ち上がる。皮肉っぽく微笑む。「……腕を上げたね」
「お前こそ。お前が還元をつかえば、俺は勝てなかった」
リッターくんの言葉に学生達が戸惑い顔になる。審判がぎこちなく微笑む。
「卿、ご冗談を……卿がロアの貴族もどきに負ける訳がない」




