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ファラワさんがエイジャさんを呼んできて、ディロさんはエイジャさんにつれられて、広間を出て行った。
俺達はそれを黙って見送り、ファラワさんとアロさん、トルさんと一緒に、帝国寮へ向かった。ディロさんは心配だけれど、俺達にできることはない。エイジャが全部手配してくれるから大丈夫だよと、ファラワさんは云っていた。
全然安心していないし、戻ったらディロさんが居なくなっているんじゃないかな、と思うとこわいが、仕事は仕事だ。俺はなんとか御山に残って、図書館に這入りこむ算段をつけないといけない。
帝国の社交室は、今日もがらんとしていた。誰にひかれることもないピアノが可哀相に見える。きちんと調律されているみたいだから、いつだって素敵な音楽を奏でられるのに。
なんだか切ないな。
厨房に這入ると、俺とルクトくんは材料を見て献立を決め、みんなに仕事を振り分けた。結局、動揺が見てとれたので、サフェくんとワウラさんにスープをつくってもらう計画は白紙にした。
ブリニ、ジャムを五種類、はちみつとバターをたっぷり。分厚く切って焼いたベーコンに、大きな目玉焼きふたつ。バターナッツと人参の千切りをじっくり煮込んだスープ。大根とキャベツのサラダ。お花をとじこめたゼリー。
菜食のひと用には、動物性のものはいれていないブリニ、ジャム、アップルバターとアーモンドバター。アボカドのソテーに味噌風味のソースをかけたもの(たまごなら食べるひとは目玉焼きをプラス)。スープは同じ。サラダにはむした雑穀を足す。デザートはお花の糖衣掛け。
帝国寮の料理人達が手助けしてくれたし、勿論ファラワさん達も手伝ってくれたから、作業はスムーズだった。でも、いつも元気にその辺を跳ねまわっているディロさんが居ないと、なんだか淋しいし、調子が狂う。
「マオ、またおかわりだって、ベーコンとたまご」
給仕をしているアロさんが、汚れた食器を手に慌てた様子で戻ってきた。「材料足りる?」
「多分……これ以上おかわりがでたら、まずいです。ベーコン」
「そっか。じゃあ、僕、分けてもらってくる。神聖公国寮なら余ってると思うから」
アロさんは汚れた食器を、洗いものをしているランスさんに渡し、出ていった。四月の雨亭へ戻ったみたいな光景だ。
俺はベーコンエッグをつくり、ファラワさんへ渡した。「ベーコン間に合うかな」
「神聖公国は、豚をいやがる学生が結構居るから。それでも、もしもに備えて、多めに置いてある筈だし、なんとかなるよ」




