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今日は、俺とルクトくんで、朝ご飯を自由につくっていいことになっている。朝ご飯をつくりに行くので、ドレスの直しから戻って、二時間も寝ていない。結構つらいのだが、恢復魔法と魔力薬でごまかしている。だって、好きなお料理つくっていい日なんだもん。
ここの厨房をかりられない訳ではないが、いかんせん仕事が忙しすぎて、好きなものをつくって食べる時間はとれていない。普通においしいご飯が出てくるから、なにも文句はないんだけど、自分でお料理してそれを沢山食べるのって、楽しいんだよな。だから今日はそれをできて、嬉しい。
奉公人の寮にある窓みたいなものは、多分魔法で光っているのだが、まだ日が昇っていないからか、今はくらかった。「今日って雨?」
「昨夜ターカック嬢が云ってたっけ。お庭のお散歩ができないですわ、って」
「ギルワさまの脚力なら充分知ってるでしょうに、これ以上なにを見たい訳? ギルワさまがお日さまでもとってくれるってのかしら」
「おはよー」
「おはよう」
ほかの新入り達も続々やってくる。居ないのは、ディロさんと、今日は別行動のふたり。
アーシェさんとヴィオウサさんは、調剤に関してある程度の知識があるので、今日は錬金術士の先生のお手伝いに行く予定なのだ。普通、新入りの奉公人が任される仕事ではないけれど、ふたりとも実家が調剤工房で、長年そのお手伝いをしていた。だから、知識はあると判断されたのだ。
調剤は、一歩間違ったら大惨事だ。変なお薬ができたり、材料が無駄になるくらいならまだましで、爆発事故で建物が吹き飛んだり、ひとが死んでしまうこともある。だから、奉公人として素行がよく、調剤の知識があるひとしかお手伝いに行かない。
俺は、薬材には、新入りのなかで多分一番くわしいのだが、調剤はからきしだ。なのでそっちには組み込まれなかった。
奉公人は助け合いが基本なので、もしそれまで調剤の勉強をしたことがなくても、奉公人の先輩に訊けば学べるらしい。そうやって、調剤系の先生達のお手伝いをする為の知識が、脈々と受け継がれているのだ。
ただ自分の腕を誇示する為に、能力証まで偽造して試験をうけに来たひとが、問答無用で落とされる理由が、なんとなく解る。
結局のところ、奉公人はどうあがいても奉公人で、入山者とは能力に歴然と差がある。だから、みんなで助け合うしかないのだ。学生達の鬱憤晴らしに利用されても、無理無体な注文をつけられても、奉公人同士知恵を出し合い助け合えば、つらくない。




